埼玉県さいたま市緑区の吉川勝利さん(73)は先月、見沼田んぼに架かる新見沼大橋有料道路の高架下で右足に網が引っ掛かり、3日間宙づりだったカラスのひなを救出した。巣のある場所まで高さは約10メートル。吉川さんは「小さな命をどうしても救いたかった」と話している。救出された時、ひなは、けがをしていたため、吉川さんが一時保護し、野生に返すため、けがの回復を待っている。

毎朝5時から芝川や見沼田んぼ周辺を歩くのが日課の吉川さん。先月26日、いつも通り歩いていると散歩仲間から「カラスのひなが宙づりでぐったりしている」と教えられた。ひなは3日前から巣に絡まった網に右足が引っ掛かった状態。巣には親鳥や他の鳥もいなく、ひなは助けを求めてずっと鳴いていたという。

巣までは高さ約10メートル、とても届きそうな高さではない。「このままでは死んでしまう。すぐに助けなければ」。自宅に急いで戻り、園芸用のポール約1・8メートルを3本つなぎ、高さ1・5メートルの脚立を持ち再び現場へ。脚立の上に立って必死に手を伸ばすが届かない。

「ひなはもう動かず、時間の問題だった」。あきらめずもう一度帰宅し、今度は約3メートルの柱2本を釘でつなぎ、より高い2メートル超の脚立を抱え、再び現場へ向かった。

妻の悦子さん(70)に脚立を抑えてもらい再び挑戦。吉川さんは脚立の上で、巣を目指して指先に全神経を集中させた。手に持つ柱だけでも重さ6〜7キロあり、なおかつ脚立の上はバランスが不安定な状態。「今思うと落ちたら自分がけがをしていた。年が年だし、頭でも打ったら自分が危なかった。必死だった」。

開始から約2時間半後の午前9時すぎ、額の汗をぬぐいながらどうにか巣を落とすことに成功した。

カラスは全長約60センチ。全身血まみれで「命も危ない衰弱状態」。急いで手当てをして、どうにか一命を取り留めたという。

県みどり自然課によると、カラスは鳥獣保護管理法で原則として捕獲や飼うことは原則禁止されているが、けがなどによる一時保護は認められているという。保護した後も速やかに野生に返してほしいとしている。

吉川さんは「カラスを嫌っている人も多いが、みんな命があって懸命に生きている。困っている人や動物を見たら助けてあげる。当たり前だし普通のことをしただけ」と話している。

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6/15(土) 15:00
埼玉新聞
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