6/24(月) 11:39配信
Web東奥

 津軽地方在住の男性(51)は27年間、自宅に引きこもった経験を持つ。小中学校でいじめを受け、それが心の傷となっていた。2年前、引きこもり経験を持つ人たちと交流を持つことで、人への恐怖心が消えたという。川崎市の殺傷事件などの影響で、引きこもりに対する偏見が広がることが懸念される中、男性は今引きこもっている人にメッセージを送る。「勇気を持って一歩踏み出せば、前に向かって進める。仲間に、思いや悩みを打ち明けてほしい」

 同級生から毎日、殴られ蹴られた。地獄だった−。

 男性は、中学校時代のいじめ体験を振り返る。ズックなどを隠されたりすることはしょっちゅう。女子生徒からは無視されていた。朝、校門前で10分以上立ち尽くし、登校するか悩むことがあった。母親に心配をかけたくなくて、何とか授業に出席した。毎日、「きょうも生きて家に帰れた」と心から思った。

 高校卒業後、首都圏のスーパーに就職。人付き合いが得意ではないため徐々に孤立。22歳で青森に戻った。

 「働かなければ」。焦りに駆られハローワークに行っても、窓口に進めなかった。人と話をするのが怖かった。周囲の目が自分に向いている気がした。

 生活費を両親からもらい、ラジオをつけて、自室のベッドで横になったり、座ったりして一日を過ごした。

 40代になると焦りが一層強くなったが、「怠けるな。家に金を持ってこい」と、とがめる父の言葉に反発を感じ、かたくなになった。

 唯一理解を示してくれた母親が2015年に病気で他界、孤絶が深まった。

 17年12月、引きこもりの人や家族を支援するKHJ全国ひきこもり家族会連合会県支部「青森さくらの会」(下山洋雄代表)の例会が開かれることを東奥日報紙で知り、すがる思いで電車で青森市に向かい、勇気を出して会場のドアを開けた。

 交流会で男性は、腹にパンチされ息が止まった中学時代の経験、優しかった母の死、父との確執…など、心にたまっていた思いを一気にしゃべった。

 人前で話すのは何十年ぶりだろうか。

 「よく話してくれましたね。ありがとうございました」。会員の言葉を受けて、長く沈殿していた暗く重い気持ちがほぐれる気がした。

 以来、月1回の例会に足を運んでいる。今後、さくらの会の中弘南地区のまとめ役として活動していく予定だ。

 5月末の川崎市の殺傷事件や、6月の元農林水産事務次官が長男を殺害したとされる事件で引きこもりがクローズアップされた。

 「川崎の事件の犯人は、自分と同じ世代。無関心ではいられない。事件の影響で、外に出にくくなっている引きこもりの人がいるかもしれない」と心配する男性。「自分は、仲間と出会って人生が変わった。ちょっとしたきっかけで生活が変わる。引きこもりから抜け出すのは大変だが、勇気を出して声を上げれば楽になる。ゆっくりゆっくり話をしよう。話すことは楽しい」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190624-00000001-webtoo-l02