経済的事情から手放すことを決め、動物愛護団体に引き渡した猫7匹。

 その後、行方が分からなくなり、精神的苦痛を受けたなどとして、飼い主らが慰謝料と猫の返還を団体に求めた訴訟の判決が5月、大阪地裁で言い渡された。甲元雅之裁判官は団体側の一連の不誠実な行為を認定し、慰謝料の支払いを命じた一方、猫の返還は認めなかった。“再会”を強く求める飼い主は、毛色や性別などの特徴を記した書類を提出していたが、地裁はどう判断したのか。

 判決などによると、原告となった兵庫県の女性は猫9匹と犬3匹を自宅で飼育していたが、夫が急病で入院。生活が苦しくなり、このうち愛猫7匹を手放すことを決めた。

 自治体の動物愛護センターへの引き渡しも検討したが、「殺処分されるのでは」との不安がよぎった。そんなとき、家族がインターネットで探し当てた大阪の動物愛護団体の存在を知った。犬猫の保護や里親募集などを担う、とうたう団体だった。女性は平成29(2017)年7月25日、団体に7匹を託した。それぞれが里親と巡り合うなどし、幸せに暮らすことを願った。これがトラブルの発端だった。

 女性はその後、預けた猫の行方を明らかにしない団体に不信感を抱き、猫の保護団体代表を務める水野直美さん(61)=兵庫県伊丹市=に相談。水野さんはすぐさま団体と掛け合い、同31日には7匹を贈与してもらうことで合意した。しかし、8月2日に水野さんが電話で確認すると、返ってきた言葉は「5匹はすでに他人に譲渡した」。水野さんらは抗議し、猫との面会や現状の写真の提供などを求めたが、団体側は一切応じなかった。その後、文書や電話で同様の要請を続けたが、団体とは秋以降、連絡が取れなくなった。

 水野さんと女性は昨年、団体を運営する男性を相手取り、それぞれ115万円の慰謝料を求める訴訟を大阪地裁に起こした。女性は猫の引き渡しも求めた。男性は口頭弁論の期日に出廷せず、反論もなかった。

 今年5月28日の判決。甲元裁判官は、男性は「当時から里親を探す意思はなく、あたかもそれがあるように装っていた」と指弾。猫は他人に譲渡したか捨てたと認め、計約60万円の支払いを命じた。

 《(2)オス、額にM字模様、臆病》《(3)メス、尻尾が短い、気が強い》《(7)メス、左耳にカット、体に触らせてくれることもあり比較的温和》−。猫の返還も求める女性は、7匹の写真と特徴を記した書類を地裁に提出していた。

 「一匹一匹に愛情があったと認められる」。甲元裁判官はこう認めつつ、「(特徴は)猫一般に当てはまるような抽象的なものにとどまる」「これらの特徴のみで他の猫と識別することは困難」とし、引き渡し請求を棄却した。

 女性の代理人を務める細川敦史弁護士は「引き渡しが認められなかったのは残念」としながらも、「団体の不正行為を端的に認定したことは評価できる」。水野さんは「同様の団体は他にも存在している可能性がある。さまざな方法で啓発を続けたい」と話した。

過去には善意装い虐待ケースも

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