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特殊詐欺の必須ツール封じ 悪用されるIP電話を規制
産経 2019.6.25 20:18社会事件・疑惑 国境越えた特殊詐欺
https://www.sankei.com/affairs/news/190625/afr1906250040-n1.html

特殊詐欺をめぐる電話再販業者規制のイメージ
https://www.sankei.com/images/news/190625/afr1906250040-p1.jpg

 被害件数が過去最悪となっているオレオレ詐欺を含む特殊詐欺に、IP電話などの固定電話が悪用されるケースが多発していることから、政府は詐欺グループに電話番号を販売する悪質な「電話再販業者」の規制に乗り出す方針を固めた。警察などが大手通信事業者に協力を要請し、悪質な再販業者が大手事業者と新規の番号契約をできなくしたり、詐欺に使われたことが判明した番号を利用停止にしたりする。

 政府は25日の犯罪対策閣僚会議で省庁横断の特殊詐欺対策プランを決定。安倍晋三首相は「認知件数、被害額とも高水準だ。被害の8割を占める高齢者が増えていく中、看過できない」と被害抑止を訴えた。

 特殊詐欺グループは大手通信事業者ではなく、再販業者から電話番号を買い取るケースが大半だ。大量の番号を売る悪質な業者も把握されていたが、これまではIP電話などの固定電話には番号の利用停止などの規制ができず、詐欺グループへの番号提供を元から断つことができなかった。

 このため、総務省や警察庁はNTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンクの大手通信事業者5社と協議し、電気通信事業法の運用を変更するなど新たな枠組みを整えた。通信事業者側は今後、必要な準備を進める。

●官民で包囲網

 政府が決定した特殊詐欺対策プランは、詐欺電話の番号自体を利用停止させ、詐欺グループに電話番号を販売する悪質な電話再販業者を締め出す狙いがある。警察当局と大手通信事業者は、実施済みの携帯電話規制と合わせ、ほぼ全ての特殊詐欺で共通する電話という必須ツールを封じて詐欺グループと被害者の接点を遮断。包囲網を狭めて被害の未然防止を図る考えだ。

 特殊詐欺対策をめぐっては、匿名性の高いプリペイド式携帯電話などが多用されたことから、携帯電話不正利用防止法が平成17年に公布された。譲渡などには本人確認が義務付けられることになり、利用を強制的に停止させる仕組みが整った。

 ただ、規制強化を受けて犯行ツールは固定電話に移行。重要なインフラとして位置付けられる固定電話は電気通信事業法に基づき、料金未払いや自然災害などの「正当な理由」がない限り、通信事業者が電話番号の販売などサービスの提供を拒むことができず、対策は出遅れていた。

 警視庁が30年に実施した調査では、被害者らにかかってきた特殊詐欺電話のうち、固定電話が83%を占め、そのほとんどが急速に普及するIP電話だった。

 インターネットの仕組みを使って音声をデータで送受信するIP電話は、警視庁が5月に摘発したタイ中部パタヤ拠点の特殊詐欺グループも悪用していた疑いがある。転送サービスなどを使い、東京23区などの市外局番「03」から始まる番号での発信も可能で、日本国内の会社や団体を装うこともできる。

 今回、政府は電気通信事業法の運用を見直し、「特殊詐欺への悪用」もサービス提供を拒否できる正当な理由に当たると位置付け、新たな対策を進める方針。


 関係者によると、特殊詐欺に使用された固定電話番号について、警察側がその番号に対して警告。同じ番号が繰り返し詐欺に使用された場合、警察は大手通信事業者に番号の利用停止を要請し、番号を使用できないようにする。

 また、詐欺グループと密接なつながりが確認されるなどした悪質な電話番号の再販業者については、警察側が大手通信事業者などと情報を共有。大手通信事業者は再販業者との契約を停止し、電話番号の提供を取りやめる方向で調整しており、契約約款などを整備するという。

 警察庁が把握した30年の特殊詐欺被害は1万6496件、363億9千万円で、21年と比較して件数は2倍超、被害額は3倍超となった。大手通信事業者の担当者は「これまでは法令上、身動きが取りづらかったが、被害防止につなげられる新対策は歓迎だ。省庁と積極的に連携していきたい」と話している。



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