風力発電、曲がり角に=建設激減、関連企業破綻も−ドイツ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190622-00000048-jij-eurp
2019/6/22(土) 13:08
YAHOO!JAPAN NEWS,時事通信

 【ベルリン時事】ドイツの総電力の2割を占め、再生可能エネルギー普及の主役を担ってきた風力発電が曲がり角を迎えている。

 補助制度の変更や、地元住民の反対運動で、発電設備の新規建設が激減。
 関連企業の破綻も相次ぐ。政府の温室効果ガス削減目標達成にも黄信号がともっている。

 「事態を過小評価していた」。
 独風力タービンメーカー、センビオンのラヌー社長は破産申請をした4月、地元紙にこう語った。
 東芝とも業務提携するセンビオンの昨年1〜9月期の売上高は、2年前から4割超減少した。
 このほかにも、今年2月に鉄塔メーカーのアムバウが破綻するなど、業界全体が苦境に陥っている。

 その主因は、昨年以来、陸上風力発電設備の新規建設が激減していることだ。
 公益法人FAウィントによると、今年1〜3月期の新規導入容量は前年同期比約9割減の13万4100キロワットと、同期としては2000年以来の低水準となった。

 独風力エネルギー連盟のアクテルム会長は「制度変更と、建設認可の遅れが大きい」と話す。
 ドイツでは17年、電力会社が再生エネ電力を発電業者から調達する際、固定価格で買い取る方式から、安い価格を示した業者順に落札する入札方式に本格移行した。
 「利益が見込めない」と、発電事業者の参加が滞り、募集容量分の入札が集まらない「札割れ」が頻発するようになった。

 自然が破壊されるとして、発電設備建設反対を求める訴訟も各地で起こされている。
 当局も認可に慎重になり、「3年前は申請から平均200〜300日だった認可までの期間が、今は700〜800日になった」(アクテルム氏)。

 政治的背景もある。
 右派ポピュリズム(大衆迎合主義)政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は、
 環境政党の緑の党を「最大の敵」と位置付け、各地で発電設備への反対運動を支援している。

 普及の遅れは再生エネ全体の停滞につながる。
 政府は既に、20年までに温室ガスを1990年比で40%削減する目標の達成を断念した。
 アクテルム氏は「このままでは、20年以降の目標も達成できない」と危機感を強めている。