オオカミ駆除の文書発見 絶滅への道筋物語る 岩手・大槌の旧家

 ニホンオオカミを駆除するために岩手県内の農家から集めた分担金の受領証が、岩手県大槌町の旧家で見つかった。ニホンオオカミは1905年、奈良県で捕獲されたのが最後の確認例とされる。受領証の日付は「明治16(1883)年2月13日」で、専門家は「絶滅への道筋をたどる貴重な証拠」と話している。
 受領証が残っていたのは、大槌町金沢(かねざわ)地区の和牛繁殖農家佐々木義男さん(64)方。父の遺品から明治期の古文書が見つかり、町内の郷土史家花石公夫さん(82)に解読を依頼して判明した。
 佐々木さんの高祖父が当時の金沢村に3厘を納めたことを証明する村発行の文書で「十三年度狼獣(ろうじゅう)殺獲手当金」と記されていた。
 ニホンオオカミの生態史に詳しい宮古市のノンフィクション作家遠藤公男さん(86)によると、岩手県は明治8?13年度、猟師らに支払う報労金制度を設けてオオカミの駆除を奨励。報労金は牛馬飼育者が負担すると定めていた。
 遠藤さんは「実際に報労金が徴収されていたことを裏付ける証拠。この種の書類は北上市で1点確認されているだけで大変貴重だ。こうした制度によってニホンオオカミは絶滅に追い込まれた」と説明する。
 金沢地区は、肉を漬けたとされる「狼酒(おおかみざけ)」、牛馬が襲われないよう祈願する「狼祭り」などオオカミにまつわる風俗が近年まで残っていた。
 金沢地区で古文書の調査を続ける花石さんは「伝承はあったが、文字での記録は初めてで驚いた。当時の行政の仕組みも垣間見えて興味は尽きない」と語る。
 古文書を見つけた佐々木さんは「昔はオオカミがいたと聞かされても現実感がなかったが、百数十年前は生活のすぐそばにいたと実感できた」と話した。

発見された古文書。「一金 三厘 十三年度狼獣殺獲手当金 右正ニ請取候也」と読み取れる(河北新報)
https://img.news.goo.ne.jp/picture/kahoku/m_kahoku-01_20190628_33010.jpg

https://news.goo.ne.jp/article/kahoku/region/kahoku-01_20190628_33010.html
2019/06/28 10:03河北新報