※週末の政治

西田昌司氏=内藤絵美撮影
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西田昌司参院議員が出版した「財務省からアベノミクスを救う」
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 財務省の官僚は経済学を勉強しているかもしれないが、現実に起こっていることを理解していない。財務省は民間貯蓄が国債をファイナンスしていると主張するが、明らかな間違いだ。天動説だ。政府の借金は国民の資産だ。

 政治プレミアへの寄稿「財政赤字を恐れるな 財政至上主義は利己主義」で近代金融理論(MMT)を紹介した。MMTには批判もあるので、反論したい。

■デフレ脱却には財政出動

 財務省はよく「財政赤字を増やして後世にツケを残していいのか」という批判をする。

 しかし、政府が国債を発行して予算を執行し公共工事などをすれば政府には債務になるが、国民にとっては資産になる。国債発行によって調達した資金で予算執行すれば確実にその分の民間貯蓄が増える。

 日銀当座預金(日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金)は基本的に無利子で、国債は有利子なので国債を引き受けることによって銀行の経営が安定していた。

 アベノミクスの異次元金融緩和で何が起きたか。短期金利も長期金利も実質的にゼロになった。このため、金融政策が無効化し、投資が増えなくなった。金利が下がったため円安になり、輸出産業には利益が出るが、銀行の経営は悪化した。

 このデフレを脱却するには財政出動しかない。

■ハイパーインフレは起こらない。

 まず、日本は世界一の純資産(自己資本)国なので通貨の信認は低下しない。円は国際決済通貨のため、簡単に売り浴びせできない。

 そもそも財政を拡大したことでハイパーインフレになった国はない。第一次大戦後のドイツや第二次大戦後の日本は敗戦による国家破綻が原因だ。ギリシャやアルゼンチンは外貨による融資のためのデフォルト(債務不履行)で、自国建て通貨で国債発行をしている日本ではデフォルトはあり得ない。

 また、財政拡大をすると民間の資金需要を圧迫する(クラウディングアウト)という主張があるが、そもそも国債発行は民間貯蓄でファイナンスするものではないので、クラウディングアウトは起きない。

 むしろ財政拡大で民間貯蓄と民間需要が創造される。需要増加によるインフレと利上げは当然起こるが、これは経済成長そのものなので問題はない。

■デフレ下の財政均衡はデフレを加速する

 「財政出動でインフレになれば物価上昇が利率を上回って実質金利低下となり、円安で輸入コストがあがる」あるいは逆に「財政出動で景気が良くなって円高になれば輸出が減るので財政出動が無効化する」という批判がある。

 最初の円安のケースについては前提となるハイパーインフレは起こらない。また円安になれば輸出が伸びるから、円高に変動し、大幅な為替変動は起きない。

 円高のケースはたしかに輸出産業には打撃になる。しかし、日本の輸出依存度は15%程度。日本は圧倒的に内需に依存している国だ。円高になれば輸入品の価格は下がり、国民生活は豊かになり、消費も増える。内需が増えるほうが外需が減るより大きいために、財政出動が無効になることはない。

 経済は自転車と同じで常に誰かが投資していない限り破綻する。問題はそのスピード、すなわちインフレ率だ。2〜4%の低インフレ率をめどに財政政策と金融政策でコントロールすればよい。

 先進国では人口減少などで基本的には民需は低下する傾向にあるので、そのままでは民間貯蓄が超過する。だから国債発行で財政出動しないとデフレになる。

 財政均衡はインフレ時に目指すべきもので、デフレ下ではデフレを加速させるだけだ。

毎日新聞 2019年6月28日
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20190613/pol/00m/010/007000c?inb=ra

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