第25回参院選(21日投開票)は7日、最初の日曜を迎えた。混戦模様の東北の中でも、最も注目を集めているのが秋田選挙区(定数1)。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備問題を巡って政府への不満が高まり、現職の自民・中泉松司氏(40)に逆風が吹く一方、野党統一候補の寺田静氏(44)は勢力拡大を目指す。(高柳 哲人)

 前回2016年の参院選では、東北6県のうち唯一、自民が勝利した秋田県。今回も「与党有利」の空気が流れていたが、公示1か月前に一変した。イージス・アショア配備に関するずさん調査などが明るみに出たからだ。

 「報道によって、秋田市だけの問題が全県に広がった。せめて防衛省が『ゼロから調査し直す』と言えばよかったが…。そりゃあ、逆風ですよ」。前秋田市議で、中泉氏の後援会の総括責任者を務める鎌田修悦氏はそうボヤく。近鉄・巨人などで活躍した同県の石井浩郎参院議員も「(中泉氏の頭に)白髪があったので伝えたら『最近、見付けたんです』と聞いて、苦労しているんだな、と思った」。中泉氏も「厳しい戦い」と自ら口にする。

 それでも、イージス問題を隠すことはせず、戦う決意を固めている。秋田市から離れた県南地域で開かれた演説会では「人口減少社会、人生100年時代に向き合い、豊かな社会を築いていく」と、問題には一切触れなかったが、陣営は「その地域にとって重要な政策を第一に話した。(イージス問題から)逃げるつもりはない」と強調する。秋田市内では「イージス(ずさん調査)は言語道断」と演説しており、今後も「与党としての責任を持ち、県民に寄り添う政治を訴えたい」とした。

 一方、寺田氏の選対本部長を務める秋田県議の石田寛氏は「相手は巨象で我々はアリ。でも、アリでも無力でないところを見せたいね」。挑戦する立場を崩さない一方で、手応えもつかんでいる。夫は寺田学衆院議員(立憲民主党)だが、野党の推薦は一切受けず“オール県民候補”の立場を鮮明化。各党の幹部の応援も受けずに戦う。

 5歳の男児の母である寺田氏は「イージスの配備がなければ、出馬を決意しなかったと思います」。問題の発生以降、支援者からはイージスに関する質問が増えており「全国的にも注目されることで、共有してもらえる機会が増えたことは喜ばしいことではないでしょうか」と問題意識の広がりが、自身のプラスにもつながるとみている。

 「公示日には、ものものしい雰囲気で『行って参ります』と言ったのを見た息子が、しばらく会えなくなると思ったらしく泣いていて、ちょっとかわいそうになった」と母親の顔も見せた寺田氏。その息子も含めた子供たちが涙を流すことのないよう「将来、安心して暮らせる秋田を作りたい」と言葉に力を込めていた。


 ◆「イージス・アショア」配備問題 秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を配備候補地と決定した調査報告書の中に、複数の誤りが見付かったことが6月4日に判明。実地調査をせず、「グーグル・アース」を使用するなどずさんなデータを用いていたことが原因と防衛省が認めた。さらに同8日の住民説明会において、防衛省の職員が居眠りをしていたことが、住民の不信感を高める結果に。岩屋毅防衛相が佐竹敬久県知事に謝罪したが、配備に関する協議には応じられない考えを示した。

 ◆秋田(改選定数1)

 中泉松司40〈1〉自現

 寺田静 44 無新

 石岡隆治45 諸新

 ※敬称略、届け出順。<>数字は当選回数。年齢は21日の投開票日

各野党幹部の応援演説に頼らない選挙戦を繰り広げる寺田静氏
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2019年7月8日 6時0分スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20190708-OHT1T50004.html