※夜の政治

参院本会議での演説で、安倍晋三首相の問責決議案を出した野党を非難する自民党の三原じゅん子氏。首相は政見放送でこの演説を褒めちぎった=国会内で2019年6月24日、川田雅浩撮影
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政治団体が開いたイベントに集まった支持者たち=東京都港区のJR品川駅港南口で2019年7月12日、大場伸也撮影
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 参院選で、動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップされた各党・政治団体の政見放送の再生回数に大きな差が生じている。議席のある党・政治団体を比べると、政治団体「れいわ新選組」や自民党が多く再生される一方で、他の政党は伸び悩んでいるようだ。【大場伸也/統合デジタル取材センター】

■れいわや自民が好調

 現有1議席のれいわ新選組は、山本太郎代表による政見放送の再生回数が16日時点で約41万回に上っている。生活の苦しい若者や中年層がやがて高齢化するとして、「このままでは野垂れ死にです」「死にたくなる社会から、生きていたい社会に」と呼びかける内容だ。

 そのうえで、消費税の廃止や奨学金の徳政令などの政策を訴えており、ネット上では「ここまで真剣だとは思わなかった」「感動した」などと反響が相次いだ。財源をどう確保するのか疑問は残るものの、再生回数の多さからは、社会に不安や不満を抱えている一部の層に「刺さっている」ことがうかがえる。

■自民、改元や年金の成果を強調

 自民党の政見放送は、安倍晋三首相と三原じゅん子参院議員が登場し、約12万回の再生回数を記録した。三原氏が「元号の制定は、大変な責任と重圧だったと思います」とねぎらうと、首相が「令和を多くの国民の皆さまから評価、歓迎していただき、ホッとしています」と応じる。「改元の政治利用」にあたらないのか、微妙な内容だ。

 さらに三原氏は、年金積立金の運用益が「(第2次安倍政権発足後の)この6年で44兆円増えました。民主党政権時代の10倍ですね」と強調。この数字には民主党政権末期の2012年10〜12月の運用益約5兆円が含まれ、「かさ上げ」が指摘されているが、首相も三原氏も意に介していないようだ。

■三原氏の演説を称賛

 また、三原氏が首相の政策や外交を称賛し、野党を批判すると、首相は大きくうなずき、三原氏が野党を「愚か者」と断罪した6月24日の参院本会議での演説について「国民の代表としての自覚、国会で議論に臨む姿勢。非常に印象的でした」と褒めちぎった。三原氏も「野党に『恥を知りなさい』と申し上げたら、すさまじい反響でした」と胸を張った。

 ネット上では「自らを礼賛し、他党をけなしてばかり」「独裁国家みたい」などと批判の声が目立つ。ただ、再生回数は順調に伸びており、安倍政権の根強い支持者に加え、批判的なユーザーからも注目を集めているようだ。

■「N国」は230万回

 一方、公明党は山口那津男代表の「ネットde政見放送」が約2万4000回、共産党も政見放送のリハーサルを収録した「比例7候補の訴え」が約1万4000回と、れいわ新選組や自民党に水をあけられている。このほか、立憲民主党(約1万3000回)、国民民主党(約6000回)など、他党の政見放送の再生回数は伸び悩んでいる。

 なお、議席のない政治団体では、「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表が「NHKをぶっ壊す!」などと連呼する動画が約230万回再生された。「オリーブの木」も約5万回と健闘している。

毎日新聞 2019年7月16日 15時00分(最終更新 7月16日 15時41分)
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190716/k00/00m/010/108000c?inb=ra