21日に投開票された参院選で、東京都選挙区(改選数6)は最後の2議席がもつれ込んだ。
自民党現職の武見敬三氏、立憲民主党新人で元朝日新聞記者の山岸一生氏、日本維新の会新人で元都議の音喜多駿氏が争い、結局、音喜多氏が5位、武見氏が6位、山岸氏は落選した。

 

自民党は「当選枠6人の東京なら半数の3人擁立」という主戦論があったものの、候補者を2人にとどめた。
もう一人が元五輪担当相の丸川珠代氏だけに大量得票が見込まれ、丸川氏への自民票偏りによる武見氏苦戦を警戒しての「安全策」だった。

 

公示直後は、出れば当選確実だった現職の山本太郎氏(れいわ新選組代表)が東京都選挙区ではなく比例に回ったこともあり、自民党東京都連内には「2人当選は固い」と安堵感が広がっていた。
ところが、さにあらず。結局、武見氏はギリギリで滑り込むという危うい当選となった。

丸川氏が114万3458票、武見氏が52万5302票という最終結果だ。

 
実は、選挙結果が出る前から自民党内で2人の当選とともに大注目だったのが、丸川氏の得票数。来夏に予定される都知事選に絡んで、である。



「丸川氏は6年前に106万票でトップ当選した。今回も100万票を大きく超えれば、自民党の都知事候補として『やっぱり丸川氏』という声が大きくなるだろうとささやかれていて、その通りになった。もっとも、武見氏が無事当選する、というのが条件でしたけれど。丸川氏は武見氏の存在に目もくれず、組織票を全部自分が取る勢いでガムシャラだった。もし武見氏が落選していたら丸川氏が戦犯となり、都知事候補の話は消えたでしょうが、自身は100万票を大きく超える強さを見せつけ、武見氏はギリギリ当選ですから、丸川氏にとっては一番いい結果になったといえます」(自民党東京都連関係者)

 

丸川氏を都知事候補に押し上げるため、9月にも予定される内閣改造での再入閣もささやかれている。
閣僚として露出度を高める戦略だ。



「再び五輪担当相に、という話が出ています。一度経験しているのでやりやすいし、そこから来年の東京五輪を仕切る都知事へのステップはわかりやすい。再び小池百合子都知事とのバトルで話題にもなるでしょう」(自民党の中堅議員)



■ 音喜多氏の名も取り沙汰
 

自民党内では二階俊博幹事長が小池押しとされる。
しかし、官邸は安倍晋三首相だけでなく、菅義偉官房長官が大の小池嫌いで、菅氏は東京都連の独自候補擁立を後押ししている。



「昨年の税制改正では、地方法人2税をめぐる都市部と地方の格差是正という名目の下、東京都が1兆円近い大幅減収にされた。それで都と自民党都連が官邸に駆け込み、国と都の協議会設置が決まったのですが、官邸と話したのは小池知事ではなく副知事。小池知事は完全に蚊帳の外でした」(自民党都連関係者)

 

もう一人、冗談のような話ではあるが、参院選を経て都知事候補に急浮上するといわれているのが音喜多氏だ。
元都議なので都政に土地勘があり、今年4月の統一地方選で東京都北区長を狙ったほど「行政トップ」志向は強い。

音喜多氏は参院選で52万6575票を獲得した。


「官邸は維新との関係を大事にしている。候補者が決まらない時には、自民と維新が手を携えることもあり得るでしょう。音喜多氏は小池知事と都議時代に袂を分かった。3年前の都知事選では小池応援の最前列にいたものの、小池氏の政治姿勢に疑問があるとして、小池氏が立ち上げた地域政党、都民ファーストの会を真っ先に離党した。そうした経緯も含め、小池氏と対比できる」(官邸事情通)

 

野党は東京に足場のある立憲民主党中心に候補者を擁立すると見られるが、名前が挙がるのはやはり蓮舫参院議員だ。
3年前の参院選で丸川氏に匹敵する112万3145票を獲得している。

 

自民党東京都連は参院選前の6月に、鴨下一郎都連会長をトップとする「都知事選候補者選考委員会」を立ち上げた。
二階幹事長が何と言おうが、絶対に独自候補でいくという強い意思表示を見せている。

 

現職参院議員の名前しか挙がってこないところに、候補者選考難航の色が見えなくもないが、参院選が終わり、いよいよ都知事選に向けての号砲が鳴った。


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