先日、ギリシャ南部の洞窟で見つかった頭骨が、21万年以上前の現生人類(ホモ・サピエンス)のものであるとする論文が発表されて話題になった。アフリカ大陸以外で発見されたものとしては、最古の骨だ。この論文は7月10日付で学術誌「ネイチャー」に掲載された。

 これがもし確実なら、現代人と解剖学的に同じ人々が、最初にアフリカを出た経緯を解明する手がかりになるだろう。しかし、新たな証拠の信頼性に疑問を持つ専門家もいる。

「この頭骨がサピエンスの系統に属していると示すものを、私は何1つ見つけられません」と話すのは、スペイン、マドリード大学の古人類学者フアン・ルイス・アルスアガ氏だ。アルスアガ氏は、2017年にこの洞窟の近くにあった別の頭骨を分析した結果、全てネアンデルタール人のもので、少なくとも16万年前のものである可能性が高いと結論付けた。

「心の底から驚きました」。最新の論文について、アルスアガ氏はそう語った。

■古い発見に最新の技術を応用

 問題の頭骨が発見されたのは、1970年代後半だった。場所はギリシャ、ペロポネソス半島のアレオポリという町の外にあるアピディマ洞窟である。その壁から、2つの頭骨の一部が突き出ている状態で見つかったため、それぞれ「アピディマ1」「アピディマ2」と名付けられた。

 ところが、化石を分析しようとしたところ、いくつかの問題にぶち当たった。まず、頭骨が岩に閉じ込められていたのだ。1900年代後半と2000年代前半になって、それぞれの破片を取り出せたものの、正体は依然として不明のままだった。

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