https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190813-00010000-clc_teleg-eurp
 抜けた歯や欠けた歯がいつか再生できるようになるかもしれない──歯の形成を担う幹細胞と、その工程にスイッチを入れる遺伝子を発見したと、
英国の研究者らがこのほど発表した。

 プリマス大学の研究者らが発見したのは、幹細胞の新たな集まりで、骨格組織を作り、歯の象牙質(歯の主体を成す硬組織)の形成に寄与しているというものだ。
さらに同研究チームは、DLK1と呼ばれる遺伝子がこの幹細胞を刺激することで、虫歯や歯の欠け、ひびといった歯の損傷も修復できるということを論文で示している。
歯が損傷した場合、通常は、詰め物をするかクラウン(歯冠)をかぶせるしか修復する方法はない。
しかし、子どもの頃に乳歯が抜けて永久歯に生え変わることからも、ヒトの体には新しい歯を生やす能力があるのは明らかだ。

 研究を率いたビン・フー博士は次のように述べている。
「歯の主体を作る新しい幹細胞と、歯の組織再生におけるDLK1の極めて重要な役割を発見したことで、幹細胞再生の理解が大きく前進した」
「現段階では実験モデルでの検証にすぎず、人体で試してみるにはさらなる研究が必要となる。しかし、再生医学において今回の研究は大躍進であり、
今後、患者にとって大きな意義を持つ可能性がある」

 英国では、18歳未満で抜歯を必要とする人の数は近年17%増となっており、1日当たり170件の処置が行われている。
定期的に歯科医に診てもらっているのは、成人の約半数。歯を1本以上喪失している成人は約2700万人(57%)に上り、
すべての歯が残っている成人の割合は、43%にすぎない。
前述の57%のうち、平均的な喪失本数は4本だった。

 論文の共著者でもあるプリマス大学歯学部長のクリストファー・トレッドウィン教授は、次のように主張している。
「(この論文を発表した)研究者らは近い将来、歯の損傷から虫歯に至るまで、歯の深刻な問題に対し、従来より時間とコストの面で効率の良い治療法を
患者に提供できるようになると思う」

研究結果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。