「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオ放火殺人事件の犠牲者35人のうち、京都府警捜査本部が氏名を明らかにしたのは10人にとどまってきた。実名発表に対して遺族の了承が得られていない上、公表内容やタイミングを巡って警察庁との間で意見が折り合わずなかったために異例の経過をたどった。事件発生から1カ月以上が経過し、京都府警は27日午後、残る25人の氏名を明らかにしたが、実名を出すことに5人の遺族が「存在がなかったことにならないようにしたい」などと応じる一方、20人の遺族は拒否の意向を示したという。

府警は事件発生から半月後の8月2日、映画「涼宮ハルヒの消失」の監督を務めた武本康弘さん(47)ら、男女10人の犠牲者の氏名を公表。公表が一部にとどまったのは、府警が「氏名公表に関して遺族の了承が得られ、葬儀を終えた犠牲者を先行的に公表する」との異例の判断をしたためだ。
70人がいた火災現場から次々に京アニの社員が救急搬送され、当初は安否情報が錯綜する中で、京都府警は、遺族らの心情に配慮しながら、DNA鑑定への協力を求めるなどし、犠牲者の身元の公表時期や方法について、慎重に検討してきた。事件発生から1週間近く経ってからようやく、その時点で亡くなっていた34人の身元の特定に至ったこと自体、異例のケースだ。
京アニ側は府警に対し「実名発表で報道されると、被害者やご遺族のプライバシーが侵害され、ご遺族が甚大な被害を受ける可能性がある」として、匿名発表を強く要請した。その後、報道各社に「(実名発表を)永久に控えてもらうことを、お願いしているのではない」との意向を示している。
捜査関係者によると、府警は「遺族に理解を求めた上、たとえ了承が得られなくても、従来通りに公表する」との立場だったが、警察庁は「公表には遺族の了承が必要」との考えを主張。10人の犠牲者の氏名公表から数日後、府警は残る25人の氏名を盆前にも一括公表する方針を立てたが、警察庁の了解が得られず、結論は先送りされたという。

ソース/YAHOO!ニュース(京都新聞社)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190827-00010004-kyt-soci