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トルコ大統領、将来の核兵器保有を示唆 演説で発言
中東勢力図に影響も
2019年9月5日 19:29



【イスタンブール=木寺もも子】トルコのエルドアン大統領は4日、自国の核兵器保有が国際的に認められないのは「受け入れられない」と述べた。将来の核保有の可能性を示唆した。トルコがこれまで本格的な核兵器開発を進めてきた事実は確認されていない。エルドアン氏の本意は明らかでないが、声明はイスラエルの核保有への非難を含む。中東のパワーバランスを揺るがしかねない危うさをはらむ内容だ。

エルドアン氏はトルコ中部での式典で与党・公正発展党(AKP)のメンバーに向け演説し「核弾頭を積んだミサイルを持つ国はいくつもあるが、我々は持てない。これは受け入れられない」と述べた。トルコが実際に核保有を目指すかどうかには言及しなかった。

さらに「イスラエルはこれらによって脅威になっている」と話した。イスラエルは公には認めていないが、複数の核爆弾を保有する事実上の核保有国だと国際社会で理解されている。パキスタンを除けば、中東で核兵器を保有するとみられる国はイスラエルだけだ。仮にトルコが核兵器の保有を目指せば、中東の軍事地図は大きく変化する。

トルコはイスラム教徒が多い中東では数少ない、イスラエルと外交関係を維持する国だ。イスラエルの後ろ盾である米国と共に、北大西洋条約機構(NATO)のメンバーでもある。

トルコは核拡散防止条約(NPT)加盟国で、包括的核実験禁止条約(CTBT)も批准している。核兵器はトルコ南部にある米軍のインジルリク空軍基地に配備されているが、トルコ軍は保有していない。これまで核保有に向け研究開発を進めたり、購入について国内で議論したりといった動きは知られていない。

一方、トルコはNATOの仮想敵であるロシア製兵器を購入し、ほかの加盟国との関係が微妙になっている。原子力開発は平和利用が目的だと表明し、2018年にはロシア国営原子力企業が手掛けるトルコ初の原子力発電所が着工した。

日本貿易振興機構アジア経済研究所の間寧・中東研究グループ長は4日のエルドアン氏の発言について「支持層である国内の民族主義者に向けた発言の可能性がある」と解説する。エルドアン氏は「先進国はみな核兵器を持っている」など事実と異なる内容も話した。今回の演説が国際社会を意識し周到に準備されたかどうか判断は難しい。