→何かがおかしいことは経験則から分かる−偶然ではない
→金融危機を完全に繰り返すとは限らない−原因が違うからだ

ここ数日の金融市場は、2007−08年の騒ぎを再現しているかのようだ。先週はモメンタム投資で大規模な巻き戻しが起き、ファクター投資は大打撃を受けた。07年夏にクオンツ投資が被った状況に似ている。今週はレポ金利が急騰し、ニューヨーク連銀が約10年ぶりの翌日物システムレポ(自己勘定による売り戻し条件付き買いオペ)実施を強いられた。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ik..B3gOLkW4/v1/740x-1.png

 何かがおかしいことは経験則から分かる。これらが同時に発生したのは偶然ではない。債券市場の極端な状況がこれらを生んだ。

  だが、07−08年の金融危機を完全に繰り返すとは限らない。原因が違うからだ。

  レポ市場では、市場参加者は極めて安全性の高い債券を担保に翌日物資金を借り入れる。金融危機時の問題は、銀行がもはや互いのクレジットや担保の安全性を信用しなくなったことにあり、市場が機能停止に陥った。

  今回は需要と供給のミスマッチに問題がある。米金融当局がここ数年で着実に通貨の供給を絞る一方、米政府は債券発行によって流通する通貨の量を減らしてきていた。そこへ法人税支払いの時期が来て、銀行は現金保有を望んだ。これら全ての要因が重なって銀行は資金の貸し出しを渋り、借り入れにははるかに高い金利が必要になった。それが17日に翌日物レポ金利を一時約8%という、とんでもない水準に押し上げた。

  ただ、資金調達における銀行のレポ市場への依存は以前ほどではなく、レバレッジで大きな損失が発生したと見込む理由はあまりない。クオンツも07年に比べ、深刻な影響を受けていないはずだ。ファクター投資を追求するためレバレッジを利用する投資家グループの数は過去10年で減少した。

  とはいえ、今回の現象を無視してよいわけではない。(マイナス金利により)借り手に金利が支払われる状況では、流動性が急速に干上がることもあると、今回の例は浮き彫りにした。

  ドル資金の調達が困難なことは近く問題化するかもしれない。低金利の環境下で、借り手は世界的にドル建て債務を膨らませている。ロンドンを拠点とするアブソルート・ストラテジー・リサーチのチャートは、中国を除く新興国市場でドル建て債務のエクスポージャーが過去最大に積み上がっていることを示している。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iFdUa3lkJYXU/v1/600x-1.png


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-19/PY1F5JSYF01S01