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「やってる振り」の外務省 知ってはいけない日本の不都合な真実
やはり大失敗に終わった北方領土交渉
矢部 宏治プロフィール
2019/09/27

講談社が私の『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)を漫画にしてくれた。しかも原著のエッセンスはほぼ100%正確に、劇画タッチの物語の中に移し替えられている。

これほど嬉しいことはない。漫画はすぐに読めて、年齢の壁も国境の壁も簡単に超えられるからだ。もしこの漫画が日本の若い世代の目にとまり、続いて英語版などが出るようになったら、現在のような日本の、ほとんど世界で一国だけといえるようなおかしな国の形は、もはや続けることが不可能になるだろう。

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やはり大失敗に終わった北方領土交渉

少し思い出してほしい。2年前に出た本書(新書版)の「まえがき」のなかで、私は当時まだ前途有望ともてはやされていた安倍首相の北方領土交渉が、今後もうまくいく可能性はまったくない、文字通りのゼロであると断言していた。

米軍は日本中どこにでも軍を展開することができるし、どこにでも基地を置きたいと要求することができる。そうした法的権利を条約上、もっているのだ。なので外務省の高級官僚向けの極秘マニュアルにも、「だから北方領土の交渉をするときも、返還された島に米軍基地を置かないというような約束をしてはならない」と、はっきり書かれている。

「軍事主権のない国に、領土交渉をすることは不可能である」

これは私の「見解」ではなく、論理的に正しい「基本原理」なのだ。だからプーチンが日本の実情を正確に理解したいま、ロシア情勢や日ロ首脳会談を詳しくウォッチしていなくても、その「基本原理」から導き出される予測が外れることは絶対にありえないのである。

こうした指摘に対して「首相周辺」は、昨年の11月段階でもまだそれを必死で否定し、上記の極秘マニュアルの記述は、それを執筆した過去の外務官僚の個人的見解にすぎないなどと反論していた。

しかしそれから2年経って、結果はどうなったか。みなさんよくご存じのとおり、北方領土交渉についてはその後、ロシア側のゼロ回答ならぬマイナス回答が確定してしまったではないか。日本側が従来の「四島返還」要求を、日ソ共同宣言(1956年)時点での「二島返還」に引き下げたにも関わらず、今後の領土交渉の可能性そのものを完全に否定されてしまったのである。(プーチン「〔北方領土については第2次世界大戦の結果として〕スターリンがすべてを手に入れたということだ。議論は終わりだ」9月8日 テレ朝NEWS他)