https://news.yahoo.co.jp/feature/1440

日本の自治体間で「パンダ誘致合戦」が繰り広げられている。名乗りを上げているのは、秋田市、仙台市、茨城県日立市、そして神戸市だ。
上野動物園で2017年に誕生したシャンシャンは、一大ブームを巻き起こした。「わが街にもあの光景を」とばかり、4都市は「所有者」である
中国側と交渉を続ける。その現場を追った。

シャンシャン特需に沸く上野

今年6月に2歳の誕生日を迎えた上野動物園(東京都台東区)のジャイアントパンダ、シャンシャン。いまなお連日、パンダ舎の前には
子パンダ見たさに長蛇の列ができる。夏休みが終わった現在も、週末は約1時間、平日でも30分近くの待ち時間を覚悟しなければならない。
地元・上野の街もシャンシャン特需に沸く。


「さすが客寄せパンダ」

顔をほころばせるのは、上野観光連盟の二木(ふたつぎ)忠男会長だ。パンダPRの旗振り役を務めている。

「パンダあっての上野」と二木氏は言う。シャンシャンがもたらした地元への経済効果は年間200億円を超えるとの試算もある。
ただ、シャンシャンの日本滞在は2020年12月末までの期限つきだ。

滞在が期限つきとはどういうことか。実は日本国内にいるパンダは、いずれも中国側が所有権を持っている。
パンダは絶滅の恐れのある希少動物で、ワシントン条約により「売買」や「譲渡」はご法度。そこで、共同研究を目的に中国から
「貸与」を受けるかたちで各動物園が養育している。保全協力費という名目で日本側が中国に支払うレンタル料は、つがい1組で年間約1億円だ。

シャンシャンは本来、2歳の誕生日を迎えた時点で中国へ返還されるはずだった。東京都と中国野生動物保護協会が締結した協定で、
そう定めていたからだ。しかし、予想以上のシャンシャン人気を受けた都側の強い要請で、中国側が1年半の貸与延長を認めた。

二木氏が「パンダあっての上野」にこだわるようになったのは、過去に「パンダ空白の3年間」を経験したからだという。

08年、上野で1頭だけ飼育されていたリンリンが死んだ。以来、11年にリーリーとシンシンが中国から渡ってくるまでの間、
上野はパンダ不在の日々が続いたのだ。

「思い出すだけで苦しくなる。街から活気が失われ、風景までもが沈んで見えました。商店街の売り上げもパッとしない。ショックでした」

上野再興のために「一日も早くパンダを招いてほしい」と関係者への陳情を重ねた。当時の石原慎太郎都知事にも直訴したが、
なにせ相手は"嫌中"の筆頭格で知られる。「そんなにパンダが見たいのか。理解できない。ご神体じゃあるまいし」と当初は冷たくあしらわれたという。
それでも地元挙げての誘致運動が実を結び、11年2月にシャンシャンの両親であるリーリーとシンシンが来日した。

パンダは「沈んだ上野」に再び活気を与えた。

二木氏はこう力説する。

「パンダは人を集めて街を変える。まさに“ご神体”ですよ」

秋田市「パンダの経済効果は48億円」

現在、国内で飼育されているパンダは上野動物園(3頭)、アドベンチャーワールド(6頭、和歌山県白浜町)、王子動物園(1頭、神戸市)の3施設で全10頭。

わが街にもパンダを──。神通力に期待する自治体があって当然だ。だが、パンダを誘致するにあたって必要なのは中国との交渉である。
尖閣問題などをめぐり日中関係が冷え込んでいたなか、各地の自治体はパンダ誘致運動に及び腰だった。

ところが、近年事態が少しずつ変化してきた。日中関係に雪解けムードが漂い始めたのである。昨年10月、安倍晋三首相と中国の李克首相が北京で会談。
その場で新たなパンダ貸与の協議を進めることで合意した。これにより、沈静化していた誘致運動が再び盛り上がってきた。

いまがチャンスと勢いづいているのは秋田市だ。今年4月、同市の穂積志(もとむ)市長が定例会見で、市内の大森山動物園に「パンダ誘致を目指す」と発表したのだ。その翌月には市長自ら中国に渡り、パンダの繁殖基地などを視察。さらには中国に太いパイプを持つ自民党の二階俊博幹事長、地元出身の菅義偉官房長官にも面会し、誘致協力を依頼した。

市もさっそく、そろばんをはじいた。担当部署である観光振興課の担当者が話す。

「シンクタンクに依頼してパンダを2頭誘致した場合の経済波及効果を調査したら、48億円という数字が出ました」

※以下、全文はソースで。