https://dot.asahi.com/wa/2019100300014.html
 人工知能(AI)は遠い未来の存在ではない。いまやいろんなところで活躍しており、中でも注目されているのが医療分野。
内視鏡などの画像から、がんを瞬時に見つけられる。その能力はベテラン医師に匹敵し、患者の負担減も期待されている。

「ベテラン医師並みの高い精度の内視鏡医療を、いつでもどこでも提供できるようになりました」
昭和大学特任教授の工藤進英医師は、こう胸を張る。
昭和大学は、名古屋大学やソフトウェア開発会社のサイバネットシステムなどと共同で、AIを活用した大腸がんの診断支援システムを開発した。
内視鏡分野では国内で初めてAIを使ったものとして国から承認され、オリンパスが3月に発売した。

 内視鏡で撮影した大腸のポリープが、がんに進行する可能性を見分ける。正確さは長年経験を積んだ専門医に劣らない。
精度は9割を超え、一般医師の約7割を大きく上回る。
評価にかかる時間はわずか0.3〜0.4秒で、ほぼリアルタイム。
従来はベテラン医師がその場で判断したり、組織の一部を切り取って精密検査(生検)をしたりする必要があった。診断結果がわかるまで1〜2週間かかることも。

 ポリープはがんに進行する可能性が高ければ切り取るが、非腫瘍(しゅよう)性なら手術の必要はない。
正確に評価できれば必要のない手術が避けられ、検査のリスクも減らせる。
「医師からは、疲れなどによるミスを減らせるといった感想が届いています。患者からも、診察や検査のために何度も病院に行く必要がなくなったと好評です。
システムを導入した病院には、患者の予約が増えているところもあります」(工藤さん)

 AIの活躍の場はどんどん広がっている。囲碁や将棋で人間を打ち負かしたり、小説を書いたりするものも登場。
おすすめのファッションを提案したり、天気を予測したりするなど、身近なところでも活用されている。企業では、顧客への電話対応や事務作業などで導入されている。
総務省が2017年にまとめた試算によると、AIや、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の活用で、今後十数年間で経済規模が132兆円押し上げられる。

 ここで仕組みをおさらいしておこう。
AIは、物事を学び、推論し、判断するといった脳の動きをコンピューターで再現する技術だ。言葉自体は1950年代と古くからあるが、ここにきて実用化が進んでいる。
コンピューターが大量のデータを分析し一定の法則を見つけだす「機械学習」や、神経回路の仕組みをまねたプログラムで自動的に賢くなっていく
「深層学習(ディープラーニング)」という技術が後押ししている。大量のデータを読み込み、どんな点に注目し判断すればいいのかを、勝手に学んでいくのだ。

 この勝手に賢くなるAIが、医師を手助けしている。効率的な治療ができるようになり、医療費の抑制も期待される。
実用化が最も進んでいるのが、冒頭で紹介したような画像診断の分野だ。大量の画像データをもとに、病気であるかどうかを判断する。
AIの性能は、学習させるデータの量や質が決め手だ。

 昭和大などのシステムが高い精度を実現できたのも、膨大な診断結果を学ばせたことが大きい。
昭和大をはじめ、国立がん研究センター中央病院や東京医科歯科大学病院など5病院の専門医が協力。
腫瘍性のポリープかどうかを判断した、約6万枚の画像を読み込ませた。
「AIに学ばせる画像は一枚一枚すべて、医師が病理診断との整合性を確認しました。さらに2人以上の内視鏡専門医が改めてダブルチェックを行いました。
学習作業には約7年もかかりました」(同)

※中略
 
 医療ベンチャー、AIメディカルサービスは、胃の検診で撮影した画像から、がんを見分ける技術を開発している。
最高経営責任者(CEO)の多田智裕医師は、熟練していなくてもベテラン並みの診断が可能になると言う。
「たくさんの画像を学んだAIの支援で、肉眼では見分けにくいがんの見落としを防げます。医師とAIがダブルチェックするので、診断が高精度になります」
胃が荒れている状態でがんを見つけるのは簡単ではない。早期の胃がんの1〜2割は、検査で見逃されているとされる。
この技術では、内視鏡の画像を分析させると、がんが疑われる部分を約0.02秒で特定。がんかどうかの確率を、「早期胃がん 97.03%」といった数値で示す。
全国の30以上の大手病院やがん専門施設と連携して、40万枚以上の画像を学ばせた。6ミリ以上の胃がんの検出率は静止画で98%、動画で94%まで高まっている。

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