https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50009868


日本で入れ墨をしたい、伝統技術を求めて海外から続々 日本の意識は変わるか
2019年10月16日

レベッカ・シールズ、BBCニュース(東京)


シャー、シャー、シャー……。彫師の彫みつ(ほりみつ)さんにとって、入れ墨を入れる刺し棒の音は軽くてリズミカルで、1匹のコオロギが鳴いているみたいに聞こえる。
東京・池袋で30年間、手彫りで入れ墨を入れてきた。使うのは、インクと刺し棒だけだ。

手彫りで入れた日本古来の神々や竜といった入れ墨は、銀行員やバンドマンの背中で生き生きとしている。腕や脚の上では鯉(こい)が飛び跳ねる。
この日は、炎から守ってくれる翡翠(ひすい)色の竜が、数千マイルの距離を移動して日本までやってきた若い消防士の腕で燃え上がる予定だ。

カイル・シーリーさん(23)は、彫師が自分の上腕三頭筋に完璧に一定の間隔で針を刺す間、静かに仰向けになっている。肩から手首にかけて、立派な竜と、幸運や崇高を象徴する牡丹の花が彫られていく。


シーリーさんが暮らすカナダ・アルバータ州グランド・プレーリーにも彫師はいるが、シーリーさんが欲しいものは地元では得られない。シーリーさんは、機械ではなく手で彫っていくタトゥー、何百年もの歴史がある日本の手彫り技術を求めてここまで来たのだ。

日本の入れ墨は西洋で以前から注目されていた。それが近年では、本格的に大流行している。おしゃれ族は、「日本まで行って手彫りの入れ墨を入れてきた」と自慢したくてやってくる。あるいは、長持ちする芸術に魅せられて来る人たちもいる。

「テボリ(tebori)だと色の持ちがずっといいし、もっと鮮やかだと聞きました」と、シーリーさんは言う。彼のわき腹や胸には、機械彫りのタトゥーが入っている。
「1回の施術に500カナダドル(約4万円)かかるので、確実に合計で数千ドルにはなるけど、このために貯金してきました」

シーリーさんが指名した彫みつさんは、インスタグラムのフォロワー数が6万3000人近くいる。米歌手のジョン・メイヤーさんなど海外のフォロワーも多い。
メイヤーさんによると、彫みつさんは最初、どうやって自分を見つけたのかや、自分のことを薦めた人物のことを知っているのかなど、徹底的にメイヤーさんに聞き取りをしてから、最終的に施術に同意したという。

最近では、先月20日から日本で開催されているラグビーワールドカップ(W杯)に合わせて来日する人から、彫みつさんに予約が入った。
(リンク先に続きあり)

彫みつさんが色を入れるのを待つカイル・シーリーさん
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/15709/production/_108971878_highreskylelyingdown.jpg