下水から生まれた肥料でコメ 生きた教材、給食に

 神戸市内の下水汚泥に含まれるリンを使った肥料で育てたコメが、同市の学校給食で年内にも活用される。農業と暮らしの資源循環を見据え、市などが開発した肥料「こうべハーベスト」。今年から同市西区の田んぼで使われ、実ったイネが今月、収穫を迎えた。資源利用を学べる生きた教材としての活用が期待される。(山路 進)

 「捨てられていたものを使う素晴らしい仕組み。給食を通じて、子どもたちに資源の巡りも伝えられる」。今月上旬、同区平野町で黄金に色づいた田んぼを背に繁田営農組合の組合長森岡強司さん(70)は笑みを浮かべた。

 リンは窒素、カリウムとともに農作物の栽培に不可欠な栄養素。日本ではほぼ全てを輸入に頼っている。市は、下水処理時にできる汚泥に大量のリンが含まれることに着目。東灘処理場で2013年、汚泥からリンを抽出する国内初の施設を整備し、肥料をつくる研究を続けてきた。

 市は16年、水事業会社の水ing(スイング、東京)やJA兵庫六甲(神戸市北区)と、窒素やカリウムなどを加えた野菜用肥料の開発に成功。同年からコメ用を、学校給食で使われる品種「きぬむすめ」の栽培で試してきた。田植え前に1度まくだけで効果が持続し、成分分析で食の安全性も確認。生産コストも従来品より約2割安いという。

 同市西区の農家31戸、約16ヘクタールで栽培されたコメは今月収穫。森岡さんは「肥だめの牛ふんなどを使ったのと同じようなものだが、全くにおわない。イネもしっかり育つ」と話す。

 学校の出前授業などで教材として活用予定の同市下水道部は「もとが下水なので抵抗があるかもしれない。食べても全く問題ないことをしっかり発信し、理解を広めたい」と話す。生産量は市内の小中学校給食用の1割弱だが、さらなる拡大に期待を寄せる。今後は、他の品種や果樹などでの活用に向けた研究も進めるという。

再生肥料「こうべハーベスト」
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再生リン肥料「こうべハーベスト」で実った水稲を背にする(右奥から時計回りに)繁田営農組合の森岡強司さん、水ingの神田崚さん、JA兵庫六甲の池田英里子さん、神戸市下水道部計画課の武村晃太郎さん=神戸市西区平野町繁田
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2019.10.22  ひょうご経済プラス