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スーパー台風に今の政治が無力である理由 気鋭の学者が語る「弱者への被害の移転」
更新 2019/10/23 07:00 dot.


 新進気鋭の哲学研究者である斎藤幸平・大阪市立大准教授が、資本主義と政治の問題に対し、世界的に知られる哲学者マルクス・ガブリエル、政治哲学者マイケル・ハートらと切り込んだ『未来への大分岐』(集英社新書)が3万部を超えるヒット作となっている。

米国やドイツに留学経験があり、欧米の左派ポピュリズム運動や気候変動の問題に詳しい斎藤氏は、れいわ新選組の山本太郎氏とも親交がある。しかし、夏の参院選で突然巻き起こった「れいわ旋風」には、ある“違和感”を覚えているという。世界と日本の違いは何か。日本で相次ぐ災害に対し、今の政治に欠けているものとは。斎藤氏に語ってもらった。

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──世界を見渡すと、移民排斥や差別主義を扇動する「右派ポピュリズム」と、米国のバーニー・サンダース上院議員や英国のジェレミー・コービン労働党党首に代表される「左派ポピュリズム」が活発になってきています。今なぜ左派ポピュリズムなのでしょうか。

 既存の政党がどれも似通った主張をするようになるなかで、自分たちの声が反映されていないと感じる人々が増えてきています。これは日本だけでなく、世界的な流れです。

 この30年間の新自由主義改革のもとで、社会から見捨てられたと感じる人々の苦しみ、怒り、疎外感といったものが鬱積していて、そうした感情が排外主義・ナショナリズムに結びつく傾向があります。欧州での極右政党の躍進などが、その兆候だと言われています。

 しかし、人々の苦しみや怒りを排外主義的な方向ではなく、むしろ、より平等で、民主主義的な連帯社会をつくり出すきっかけにしようとする人々の動きも生まれていて、それが左派ポピュリズムです。

 ただ、これまで日本では、海外の左派ポピュリズム運動を、「反緊縮財政」という一面的な部分だけ切り取って伝える人たちが多かった。『未来への大分岐』で、海外の左派知識人たちと社会運動について繰り返し議論したのは、もっと大きな視点で、左派ポピュリズムを考えたいと思ったからでした。
(リンク先に続きあり)