【台風の災害ごみ】国を挙げて処理進めよ
2019/10/24 09:00

台風19号は大量の「災害ごみ」を発生させた。処理が追い付かず、道端や仮置き場に積まれたままの光景が被災地で見られる。復旧の妨げになるばかりでなく、悪臭や腐敗など衛生面の悪化や火災発生が懸念される。片付くペースが遅れれば、被災者の生活再建への意欲もそぎかねない。県や市町村の枠を超えた広域対応が不可欠だ。国は都道府県の調整を進め、処理の加速に全力を挙げてほしい。

 県内の住宅被害は一万棟ほどに達した。調査が進めば、さらに増えるとされる。がれきや家電製品などの量は「把握できないほど膨大」(県一般廃棄物課)という。東日本大震災で出たごみ処理も終わっておらず、完了まで数年かかる見通しだ。環境省は全国で出た災害ごみの量が、昨年の西日本豪雨時を上回る数百万トンとみており、全国規模の対応が必要なのは明らかだ。
 郡山市では廃棄物処理施設の機能が一部停止した。環境省は南相馬市小高区と浪江町棚塩の仮設焼却施設で生活ごみを受け入れると決めた。県と両市町の協力申し出を受けて実現した。助け合いの動きが広まるとありがたい。

 とはいえ、本県だけで処理しきれる量ではない。県外の被災地も同様の課題に直面している。内堀雅雄知事は視察のため来県した安倍晋三首相に国の全面支援と災害ごみ対策などを訴えた。東北市長会は早期の激甚災害指定、処理への支援などを国に求める特別決議をまとめた。

 小泉進次郎環境相は広域的に調整する考えを示す。国は、総量を早急に把握するとともに、どこの災害ごみを、どこに運び、どう処理するのかを立案するべきだ。よそから受け入れるには、施設のある市町村と住民の協力が欠かせない。国は理解を得る努力を重ねてもらいたい。

 大規模災害が起きるたびに、ごみ処理にまごつくようでは困る。仮置き場の候補地、収集運搬方法などを定めた災害廃棄物処理計画を市町村が積極的に策定するよう望む。

 寒さが増す。被災地の生活環境を一日も早く元の姿に戻したい。スピード感を持った対策が肝要だ。(鞍田炎)
https://www.minpo.jp/news/moredetail/2019102468874