2019年10月30日 11時47分
産経新聞

 もう、まずいとは言わせない−。

 生徒から不評だった中学校の給食改革に、大阪府寝屋川市が本格的に乗り出した。きっかけは、市長に寄せられた1通の手紙。生徒からの改善を願う切実な訴えをもとに、「食べ残し量ゼロ」を目標としてメニューや提供方法に工夫を凝らした新たな給食が来月から提供される。その成果は…。(小泉一敏)

 《学校の給食がおいしくなくて、いつも残してしまいます。なんとかしてください》

 新たな給食の導入は、6月、広瀬慶輔市長あてに市内の中学生の姉妹から寄せられた手紙がきっかけだ。訴えを受け、広瀬市長は7月にツイッター上でアンケートを実施。中学生や卒業生ら約500人が回答を寄せ、「おいしくない」が77%にのぼった。

 市によると、平成25年から市立全12校で始まった給食は、他市の民間業者が調理し、ご飯とおかずそれぞれを別の容器で提供する弁当方式だ。ご飯は温かいが、おかずは20度以下で保存したもので、食べ残し率は3割にのぼっていた。

 一方、小学校は各学校内で調理する方式で、食べ残し率はゼロ。中学進学後、給食の「差」に戸惑う生徒もいる。

 市も生徒の意見をもとに市教委や議員らに試食してもらうなどしてきたが、「特に問題点を指摘されることはなかった」という。

 ただ、広瀬市長はアンケート結果を受けて、「いくら栄養面ですばらしいメニューでもそもそも食べないと意味がない。消費者の立場になっていない」と方針転換。11月12日からはハンバーグや唐揚げといった主菜を保温機能のある食缶で運んで教室で取り分ける方法にし、給食費は据え置きとした。

 広瀬市長は「お金をかけずに工夫できることはある。おいしい給食を提供できるよう取り組んでいきたい」と話している。

 弁当方式で提供する中学校の給食をめぐっては、24年から導入していた大阪市でも、「冷たい」「おいしくない」との感想が寄せられた。市は改善に取り組み、今年2学期から校内での調理方式や近くの小学校から給食を供給する方式に切り替えた。

 神奈川県大磯町でも、28年1月から町内2校の中学校で導入していたが、食べ残しも多く、異物の混入も相次いだため、29年10月に提供を停止した。その後、校内で調理する方法に決定したが、導入時期を含めて模索が続いている。

■試食「これからはしっかり食べられる」

 「いい匂いがする」。10月18日、寝屋川市立第十中学校の2年生の教室に元気な声が響いた。これまでの冷え切ったおかずではなく、温かい給食の匂いも広がる。この日は、11月から提供される新たな給食の試食会。

 主菜の焼き肉は、保温機能のある食缶で教室まで運ばれ、各自に取り分けられた。従来は、冷たい状態で肉の脂が浮いていたこともあったという。

 実際に記者が試食してみると、牛肉と豚肉、ニンジンといった野菜などと炒められた焼き肉は、作りたて同様に温かくご飯が進む。ゴマもまざっていて、より多くの栄養素を取ることができるような工夫がされていると感じた。

 取り分けを行うことで、おかわりも可能に。ご飯とおかずをおかわりした星原善さん(14)は「今までは残して、おなかが減ることもあったが、これからはしっかり食べられます」と笑顔をみせた。
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/17307015/