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島根)川漁師が水彩画展 リアルな漁とアユの光景 江津
小西孝司2019年11月2日03時00分


 最後の川漁師――。江の川流域でそう呼ばれる江津市桜江町後山の天野勝則さん(80)の水彩画展が、同市桜江町川戸の今井美術館で開かれている。川漁の様子や遡上(そじょう)するアユなどを、詩情豊かに描きあげた84作品。これまでの作品をほぼ集めた、集大成ともいえる個展だ。


 天野さんは自衛隊員や会社員などいろいろな職業を経て、30代で川漁師に。漁協組合長も務め、アユやツガニで家族を養ってきた。57歳の時、著書「アユと江の川」につける挿絵を自身で描いたのが、絵との出あい。水彩画を選んだのは安価だったためだ。「日本画にあこがれたが、顔料は高い。油絵は女房がにおいに酔うてしまうけえ」。描くのは漁のない冬場。浜田市の画材店の店主に教えを請いつつ、今では1メートルを超す大作も。

 漁は夜。月夜の下の構図が多いが、描く光景はリアルだ。アユは強い月明かりの下では森の影に集まる。アユを捕食する姿を見たことのあるアユカケが、岩陰から顔を出す。漁師は鮮度を保つため二つのクーラーボックスを担ぎ、魚の感触を確かめるため網に指を掛ける。漁師が岸辺に投げる雑魚を音もなく狙うキツネや、舟の音で驚く小魚を狙うゴイサギの姿も。「『あんたでなきゃ、描けん』と言うてくれるのがうれしい」
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