2019年10月2日 14:45

野村総合研究所は2日、東京都内で記者会見を開き、消費者がデジタルサービスから得られる「豊かさ」を考慮した新たな経済指標を発表した。国内総生産(GDP)など従来の指標では捉えにくかったデジタルサービスが生み出す消費者メリットを加味した経済分析が可能になるという。

野村総研の調べによると、日本では実質GDPの成長率や所定内賃金水準などの経済指標が低迷する一方、生活者の主観的な生活実感は向上している傾向にあるという。同社の此本臣吾社長は「背景にはデジタルサービスから得られる豊かさがあると考え、デジタル時代の経済活動をより実態に合わせて表す新指標を策定した」と説明した。

具体的には、デジタルサービスから生まれる「消費者余剰(消費者が払ってもよいと考える額と実際に払った額の差)」をデジタルサービスから得られる豊かさと定義。この消費者余剰の総額と実質GDPを足し合わせた数値を新指標とした。デジタルの消費者余剰は実際の金額としては表れない「虚数=i」のような概念上の存在であることから、新指標は「GDP値+消費者余剰の総額i」と表現する。

野村総研によれば、2016年の日本の実質GDPは520兆円だったが、同社試算によるとデジタルの消費者余剰の合計は161兆円という。この年の経済状況を新指標で表すと「520+161i」となる。

野村総研は新指標とあわせて、社会のデジタル化の進展の度合いを示す「デジタル・ケイパビリティ・インデックス(DCI)」と呼ぶ指標も発表した。今後はこれらの指標をもとに、企業向けコンサルティング事業や政府、自治体への提言事業を展開する。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO50490850S9A001C1X20000