日ごとに寒さが強まり、ぶ厚い冬用布団からなかなか出られない人も多いと思われるが、英国ではフカフカの羽毛布団を買ったばかりの男性が、ひどく息切れするようになり、2階の寝室に上がることもできないほど体力が落ちてしまった!

英国の医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』に今月18日に掲載された症例報告によると、43歳の男性はちょうど3年前の2016年11月、原因不明の倦怠感と過去3カ月間続く息切れの症状を訴えて開業医を受診した。

■最初のクリニックでは「異常なし」

レントゲン 男性患者の胸部X線画像。最初に行ったクリニックでは「異常なし」と診断されたが…、よく見ると淡い陰影(すりガラス陰影)が見える(cBMJ Publishing Group Limited2019)
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患者に喫煙歴は無く、血液検査はすべて正常で、医者は下気道感染症と診断。その後、症状は少し改善したが、しばらくすると再び悪化し、仕事を2週間休む羽目になった。

12月に再び受診した際は「息切れがひどくて2階の部屋に行くのも30分もかかるうえ、たどりついたあとは休まなければ動けません」と訴えたが、胸部レントゲン写真には目立った異常は見つからなかったため、困った医者は呼吸器専門医に電話してアドバイスを求めた。

■CT検査で肺動脈を調べる

CT検査の結果、両方の肺にモヤモヤとした濃淡のあるすりガラス状の陰影が映し出された(cBMJ Publishing Group Limited2019)
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王立アバディーン診療所のオーエン・デンプシー医師は、CT検査で肺動脈の画像を撮影する必要があると判断。その結果、血管が詰まる肺塞栓症は確認されなかったが、放射線医が「過敏性肺炎」の疑いを指摘した。

この病気は、一般的な肺炎のように細菌やウイルスなどが原因ではなく、粉塵や化学物質(抗原)を繰り返し吸い込んだことが原因で引き起こされるアレルギー反応だ。息切れやせきなどの症状が現れ、ほおっておくと、抗原にさらされ続けて炎症が慢性化し、肺がどんどん固くなる。

アレルギー反応の原因について質問を重ねるうちに、男性が最近、寝具を合成繊維のものから、羽毛布団に変えたことを突き止めた。

■羽布団を捨てなければならないのか

過敏性肺炎を起こす原因は羽毛だけではない
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アレルギー検査の結果、布団や枕の中に詰められたアヒルやガチョウの羽毛の細かい塵やホコリに対する抗体が確認された。そこで羽毛布団を止めて以前の布団に戻すよう指導し、ステロイド剤を投与したところ、1カ月で急速に改善し、半年後には再び元気に活動できるようになった。

医療チームによると、過敏性肺炎の原因は羽毛だけではなく、多岐にわたる。牧場で働く農夫には、干し草やとうもろこしなどの粉塵が原因になるし、林業や木工業の作業員には、おがくずが原因になる場合があることから、職業特有の環境が抗原を作り出すと指摘する医者もいる。

過敏性肺炎は診断が難しいため、医師は患者の生活環境の変化を詳しく聞き取らなければ見落とすおそれがある。デンプシー医師は「羽毛布団で寝ているからといって、捨てたり、パニックになる必要はありません。でも、もし咳や息切れなどの呼吸器の症状がある場合は、すぐに病院にかかってほしい」と話している。

2019年11月24日 06時00分 ハザードラボ
https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/3/2/32083.html