かった。初期の治療で他人の皮膚の提供を受ける通常の治療法を採用せず、自己の組織を培養してできた皮膚や人工皮膚だけで救命されたことも判明。専門家は、全身の90%以上にやけどを負った患者への治療としては過去に例がないとしている。

一命を取り留めたことで動機の解明が可能となり、京都府警は回復を待って逮捕し、本格的な捜査に乗り出す。

医療関係者によると、治療したのは大阪府内の病院。当初、事件の被害者の受け入れ準備を進めていたが、収容先の京都府内の病院や京都府警からの要請を受け、青葉容疑者を治療することになった。搬送は事件発生から2日後で、全身の約90%が「3度熱傷」に分類される重いやけどを負っており、救命は困難な状況だった。

他人の遺体から提供された移植用皮膚を保管する「スキンバンク」はドナー不足とされ、多数の被害者に多くの皮膚が必要となる可能性があった。過去に全身の70%程度をやけどした患者で提供皮膚を使わずに救命したスタッフがおり、同様の治療が可能と判断。提供皮膚は被害者へ優先する方針を決めた。

初期の治療には「人工真皮」と呼ばれる人工皮膚を使用。その後、自分の皮膚組織の一部から培養して皮膚を作り出す「培養表皮」を使って移植する手術を繰り返した。培養に時間がかかるため、その間に人工真皮だけで治療するのは難しく、感染症などへの高度な対策が必要になる。

提供皮膚を使わない条件下で広範囲のやけどを治療するケースはほとんどなく、結果的に初の事例につながった。来年にも学会で発表される見通し。

青葉容疑者は事件当日の7月18日、京都府内の病院に搬送。同月20日、大阪府内の病院に移送された。8月にはほぼ命に別条がない状態に回復。今月8日に京都府警の事情聴取を受け、14日に京都府内の病院に戻った。



◆京都アニメーション放火殺人事件 7月18日午前10時半ごろ、「京都アニメーション」の第1スタジオから出火。鉄筋コンクリート造りの3階建ての建物内にいた社員70人のうち、男性14人、女性22人の計36人が死亡し、33人が重軽傷を負った。京都府警は青葉容疑者の身柄を確保。ガソリンをまいて放火したとして、殺人や現住建造物等放火などの疑いで逮捕状を取った。容疑者の回復を待って逮捕する方針。

2019年11月27日2時0分
https://www.nikkansports.com/general/news/201911260000910.html