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マンボウ、ジャンプしたら死ぬって本当?最弱生物説の発生源は…ネタにされても研究進まない「つらい事情」
11/28(木) 7:00配信

 「ジャンプして着水した衝撃で死ぬ」……インターネット上でマンボウを「死にやすい生き物」として印象づけてきたこの説……。「死ぬ」というのは全くのウソですが、マンボウが「ジャンプをする」のは事実です。水族館でゆったり泳ぐ姿からは想像しにくいですが、どうしてマンボウはジャンプするのでしょうか? 実は、これには多くの謎があるのです。そして、「死ぬ」という誤った情報の発生源は……。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

【画像】これが「マンボウジャンプ」の瞬間だ! 「運良く」水族館で見た姿は… 

マンボウのジャンプとは

 「マンボウは水面に向かって加速し、頭部から飛び出してジャンプします。その後は、体を横に倒して、側面を水面に叩きつけるように着水します。クジラのブリーチングみたいな感じですね」

 そう話すのは、マンボウを研究する澤井悦郎さんです。2019年10月には、水族館でおこなったマンボウの行動観察などを小学生向けにまとめた児童書「マンボウは上を向いてねむるのか」(ポプラ社)を発売しました。この書籍には、マンボウのジャンプに関する行動観察の様子も掲載されています。

 マンボウがジャンプするのは自然界だけではなく、運が良ければ水族館でも見ることができるそうです。澤井さん自身も、200時間近く水族館でマンボウを観察して、数回ジャンプを確認したといいます。また、ジャンプするときは何度か続けて飛ぶこともあるそうです。

 全身が水面から出るほどの大ジャンプを決める時もあれば、上半身だけ水面から出す「ジャンプ未遂」を行うこともあるというマンボウ。どうしてマンボウはジャンプするのでしょうか。

実は謎だらけのジャンプ

 まず、ジャンプをする魚はマンボウだけではなく、様々な魚で確認されています。魚がジャンプする理由は、体表についた寄生虫を落とすためという説が一般的に普及しています。他にも、水中に含まれる酸素が少なくなり酸欠状態になったとき、捕食者から逃げるとき、求愛行動のときなどの説も知られています。

 マンボウのジャンプも、一般的な魚類のジャンプ行動と同じように「寄生虫を落とすため」と推測されています。マンボウの体表にいる寄生虫は大きくて目立ちやすく、たくさんついているように見えることから、この説が広く認知されているそうです。

 しかし、澤井さんはこの理由に疑問を持っているといいます。

 水族館の海水魚は、体表の寄生虫を落とすために短時間淡水につける「淡水浴」をしますが、澤井さんは淡水浴から2日しか経ってないマンボウがジャンプするのを目撃したことがあるそうです。「淡水浴で寄生虫が落としきれなかった可能性もありますが、マンボウがジャンプする理由は一概に『寄生虫を落とすため』とも言い切れない」といいます。

 「実際のところ、マンボウのジャンプの理由はよくわかりません」と澤井さん。「そもそも、マンボウのジャンプはその行動が知られているだけで、マンボウのジャンプに関して研究をした人は今まで誰一人いませんから」

 いつするのかわからないジャンプ行動を研究するには相当な時間と労力を必要とするといいます。「研究者でもよほど物好きな人でないと難しいのではないでしょうか」

 生き物の生態は、研究者が地道に時間をかけて研究して、データをまとめて発表し、それを評価されることでより正しく理解されていきます。一般的に流通しておらず、漁業的にも価値が低いマンボウの生態を、専門としている研究者は多いとはいえません。
(リンク先に続きあり)