「三休庵」35年お疲れさま 金沢カレーと一線画し 設備老朽化、30日閉店

 駅西新町3丁目、国道8号沿いのカレー店「三休庵駅西店」は30日、創業35年の歴史に幕を下ろす。名物の「金沢カレー」とは一線を画し、市民の胃袋をつかんできたが、店の老朽化という波が押し寄せた。県内に最大5店舗あったフランチャイズチェーンは全て消え、最後に思い出の味を食べようと、訪れる客は後を絶たず、最大1時間待ちの行列ができた。

 1984年創業の三休庵は、店のパートから2代目店主となった新田ひろみさん(59)=神谷内町=が、夫の隆昭さん(67)とともに営業している。

 数十種類の香辛料にニンジンやタマネギを溶け込ませた秘伝のルーは、甘口、中甘、中辛、辛口の4種類がある。3日間冷暗所で寝かせ、素材の甘みとコクがライスに絡む。エビやホタテなどのシーフードは新鮮さにこだわり、直接、卸売市場から仕入れている。カツカレーが定番の人気だ。

 三休庵は、しじま台が創業の地で、駅西店は2番目の店舗となる。三休庵グループは、それぞれの店は独立しているが、同じルーを使う。最盛期には市内と内灘町に5店舗があったが、10年前に駅西店を除き全て閉店した。全国的に知名度を上げる金沢カレーにも屈さず、富山や福井など県外からのファンも多い。

  閉店は、10月末に急きょ決まった。「いっぺんに厳しくなった」と新田さん。厨房(ちゅうぼう)に立ち続ける隆昭さんの体力問題もあるが、建物はもちろん、冷蔵庫や攪拌機(かくはんき)などの設備の老朽化も目立つようになった。閉店を知らせる貼り紙をした直後から、往年のファンが集まり、店内外に長蛇の列ができる時間帯もある。

 開店の1時間前から並んだ主婦の田中恵さん(44)=松村5丁目=は「20代の頃、デートで食べた青春の味。金沢のカレー店でも、ワンランク上だと思うので、なくなるのは寂しい」と惜しんだ。

 8月ごろに、神奈川県在住で加賀市出身の夫婦が店の味を再現したいと申し出た。夫婦は「三休庵」の名前も引き継ぎ、同県内で新たな金沢生まれのカレー店が誕生する予定という。

 新田さんは「今は寂しさはないけど、これから込み上げてくるのかな。残り少ない営業でお客さんに恩返ししたい」と話した。

カレーライスを受け取る来店客=駅西新町3丁目
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2019/11/29 02:12 北國新聞