法制審議会(法相の諮問機関)の所有者不明土地対策を議論する部会(部会長・山野目章夫早大大学院教授)は3日、中間試案の原案をまとめた。民法で認めていない土地所有権の放棄について「所有を巡り争いが起こっておらず、管理も容易にできる」ことを条件に、個人に限って認めることを盛り込んだ。

法制審は2020年1月から意見を公募し、同年9月までに要綱案をまとめる。政府は20年秋にも想定される臨時国会に、民法や不動産登記法の改正案の提出をめざす。

土地の所有権は適正な管理や税金の支払いなどの義務を伴うものだ。所有権の放棄は、課税逃れや管理費用を国に転嫁するなどのモラルハザードを招きかねないとの懸念が根強く、現行の民法は認めていない。

法制審部会の議論では人口の都市集中や少子高齢化の進行を受け、遠方の土地を手放したいと考える人が多くなると指摘があった。親など被相続人の死後に相続した土地を管理できなくなり放置することは、所有者不明土地の発生要因ともされている。

中間試案の原案は、放棄できる主体を「自然人」に限定し、法人による放棄は認めない。放棄された土地をいったん国に帰属させ、地方自治体が希望すれば取得できるしくみを検討する。地方の事情に詳しい自治体の方が再開発など土地の使い道を見いだしやすいからだ。

所有者不明土地の発生原因は、相続時の登記変更忘れなども深刻だ。中間試案の原案は、不動産を相続する人が誰なのかをはっきりさせるため、被相続人が亡くなった際に相続登記の申請を義務付ける。手続きを簡素化する代わりに、一定期間内に登記しなければ罰則を設けることを検討する。

原案には、遺産分割を協議できる期限を「10年」と定めることも盛り込んだ。現在は法的な期限はない。相続開始から10年で協議や申し立てがなければ、法定相続分に従って分割を可能にする。期限を設けることで遺産分割の話し合いが進むことを想定している。

日本経済新聞 2019年12月3日 18:01
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