https://wired.jp/2019/12/07/a-once-a-month-birth-control-pill-is-coming-heres-how-it-works/


2019.12.07 SAT 18:30
月1回の服用で済む経口避妊薬、その画期的なメカニズム

毎日定刻に飲むことで効果を発揮する経口避妊薬。女性が自ら妊娠をコントロールできる比較的手軽な手段である一方、飲み忘れも多いのが難点だ。この欠点を克服すべく、米国では1カ月に1回の服用で効果を保つ「ヒトデ型」ピルの開発が進んでいる。その画期的なメカニズムとは?

TEXT BY MEGAN MOLTENI

米国では、1,500万人以上が経口避妊薬(ピル)を服用している。ピルには体に「妊娠している」と思い込ませるホルモンが入っており、毎日同じ時間帯に飲んでさえいれば、この避妊方法は鉄壁に近い。

ただし、飲む時間が大きくずれたり、1日でも飲むのを忘れると、ピルの避妊率99パーセントという数字は下がり始める。それゆえ、ほとんどの人は必然的に失敗してしまうのだ。米国では毎年、経口避妊薬を使用している100人に9人が妊娠しているという。

1回の摂取で29日間効果を持続するピル

子宮内避妊器具(IUD)といったより確実な方法があるにもかかわらず、いまだに多くの人々がピルを使っている。それは病院に行ってホルモンを分泌するデヴァイスを皮下に埋め混んだり、子宮に挿入したりする方法に比べ、ピルが比較的安価で手軽だからだ。

研究者たちは長年にわたり、双方の利点を融合した方法を探してきた。つまり、薬を飲むのと同じくらい簡単に摂取でき、かつホルモンを長期的に供給できる方法だ。しかし、そのためには胃が手ごわい敵であることが判明した。

この暗くてぬるぬるしたアコーディオンのような臓器は、収縮を繰り返すことで腐食性のドロっとした胃液をかき回し、飲み込んだものすべてを幽門へと送り込む。幽門とは胃の末端にある十二指腸に接する部位だ。

高コレステロールやHIV、妊娠のコントロールなどのための経口薬を毎日服用し続けなくてはならないのは、この酸性の荒波のせいだ。薬は、このような厳しい環境では長くもたない。

ただし、錠剤のように折りたためる柔軟なシリコン製の“手裏剣”に薬を入れられれば、話は変わる。これこそが、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院とマサチューセッツ工科大学(MIT)率いるチームが、5年ほど前に考え出した解決策だった。

研究チームは当時、マラリアや結核、HIVの治療薬を運ぶための緩効性の薬剤を開発していた。そしてこのたび、それと同じ仕組みを使って、避妊ホルモンを豚の体内で最大29日間にわたって安定供給できることを証明した。結果は、医学誌『Science Translational Medicine』で12月4日に発表された。

「この研究の新規性は、一度の服用でその後1カ月間にわたって薬を届けられる点にあります」と、論文の共同執筆者でブリガム・アンド・ウィメンズ病院およびMITで消化器内科医と医用生体エンジニアを務めるジョヴァンニ・トラヴェルソは語る。

この研究の概念実証実験は2018年末に実施され、その後リンドラ・セラピューティックス(Lyndra Therapeutics)による開発が始まった。リンドラは、トラヴェルソがMITの生物工学者ロバート・ランガーと15年に共同設立したボストンの企業だ。

19年7月、同社は低中所得国での販売を念頭に臨床試験を実施するため、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から1,300万ドル(約14億1,300万円)の資金援助を受けた。

カギは「ヒトデ型」の構造
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