ソニーの株価が17年ぶりの高値を付けた。トップシェアを握る画像センサー(CMOS)など半導体事業が好調で、今後の業績拡大に期待感が高まっているためだ。収益力の低下に多くの投資家が失望した2003年の「ソニーショック」以前の水準に戻したことになる。

  10日の取引で一時前日比1.7%高の7268円まで上昇し、02年5月以来の高値水準を回復した。今年の上昇率は3割を超え、東証1部全体の値動きを示すTOPIXの2倍以上に達している。

ソニー株は、パソコンやゲーム機の成長期待から2000年に1万6590円の史上最高値(分割考慮)を付けたが、ITバブルの崩壊で急落。03年には決算内容の悪化を受けてストップ安が続き、日本株全体が連鎖的に下げる「ソニーショック」を引き起こした。東日本大震災や増資の影響を受けた12年には700円台まで落ち込んだ。

  ソニーの営業利益はゲームや音楽事業の伸びがモバイル事業の不振を吸収し、前期まで2期連続で過去最高を更新した。今期(20年3月期)は3期ぶりの減益を計画するものの、半導体の好調に支えられ、当初の8100億円から8400億円に上振れ、減益率は縮小する見通しだ。

  英調査会社のIHSマークイットが5日に発表した19年7−9月期の半導体企業ランキングによると、ソニーは9位と前四半期の15位から躍進。日本勢で唯一ベスト10に入り、利益の伸び率は最も高かった。

  スマートフォン向けに需要が拡大している同社CMOSの昨年のシェアは50.1%(金額ベース、テクノ・システム・リサーチ調べ)。今上期決算会見での十時裕樹最高財務責任者(CFO)の説明によると、生産は下期もフル稼働を継続し、20年度の生産目標を月13万枚(300ミリウエハー換算)から13.8万枚に引き上げた。

さらに需要増に対応するため、長崎県に工場を新設し、21年4月の量産開始を目指す。スマホの多眼化、大判化の進展が想定以上だという。半導体市場の動向を調査する仏ヨール・ディベロップメントの予測では、19年のCMOS市場は前年比10%増、23年まで毎年8−9%伸びる見通し。

  半導体事業を巡っては、世界的アクティビスト(物言う株主)のダニエル・ローブ氏が6月、エンターテインメント分野への注力を求め、半導体事業のスピンオフ(分離・独立)を要求。これに対しソニーは9月、人工知能(AI)や自動運転分野での需要増加が見込めるとし、拒否した。

  JPモルガン証券の綾田純也アナリストは11月28日に投資判断を「中立」から「オーバーウエート」に、目標株価を5800円から1万円に見直した。CMOSを含む同社のイメージング&センシング・ソリューション部門は「多眼化・高精細化・大口径化のトリプルメリットを背景に、年率30%強の増益」を予想する。

  また、来年末の商戦に新機種「プレイステーション(PS)5」が投入されるゲーム事業も21年度の増益転換を想定し、映画や音楽事業の投下資本利益率(ROIC)の向上も続くとの見方を示した。

  みずほ証券の中根康夫シニアアナリストも投資判断「買い」を継続し、目標株価を8400円から9900円に上げた。スマホカメラの複眼化、センサー大型化の勢いはさらに強まっており、「特に大型化の収益への好影響が十分に認識されていない」と分析。CMOSの持続的な収益拡大が可能で、株価は依然割安だとみている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-10/Q1V0UGT0G1KW01?srnd=cojp-v2
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2019年12月10日 9:13 JST