■66機の衛星で全世界に通信を届ける、イリジウムの挑戦

衛星を使って全世界に通信サービスを展開している「イリジウム・コミュニケーションズ」は2019年12月5日、第1世代にあたる衛星の最後の1機を、軌道から離脱させる運用を実施、退役させたと発表した。

同社はすでに、性能を向上させた第2世代機「イリジウムNEXT」を打ち上げており、システムの世代交代が完了した。ただ、イリジウムといえばおなじみの、太陽光の反射で衛星が輝いて見える「イリジウム・フレア」という現象は、第2世代機では発生しないため、この第1世代機の退役により見られなくなる。

今回は、イリジウム衛星の歴史から、その仕組み、そして功と罪、課題などについてみていきたい。

■全世界を66機の衛星通信で結ぶイリジウム

イリジウム(Iridium)は、米国の企業「イリジウム・コミュニケーションズ」が運用する通信衛星で、地球を取り囲むように66機の衛星を配備し、全世界に衛星を使った電話やデータ通信サービスを展開している。

複数の衛星で全世界に通信をつなげる、というアイディア自体は以前からあったが、それを実現させようと動いたのは、1990年代の初頭、モトローラの会長だったロバート・ガルヴィン(Robert Galvin)氏だった。

当時はまだ携帯電話もそれほど普及しておらず、利用できる地域はまだ限られていた。そんななか、世界のどこでも使える携帯電話という理想を追い求めた彼は、重役たちの反対を押し切ってイリジウム構想を推進。そして同社が主に出資する形で、衛星の運用やサービス提供を行う企業「イリジウム」が立ち上がった。

衛星はモトローラとロッキード・マーティンが製造し、1機あたりの質量は689kg。高度780km、軌道傾斜角86.4度の軌道に、6つの軌道面に11機ずつ分けて乗せて運用する。

イリジウムという名前は、当初は77機の衛星を使ってサービスを展開する予定だったこと、そして原子番号77の元素がイリジウムであることに由来する。その後、検討を進めるなかで66機でも十分であるとされ、数が減らされたが、名前だけは残ることになった(ちなみに原子番号66はジスプロシウムという元素であり、知名度や読みやすさなどから、一般向けのサービス名にはちょっとふさわしくない)。

衛星の打ち上げは1997年から始まり、米国やロシア、中国のロケットを使い、矢継ぎ早に配備が進んだ。そして1998年11月1日、ついにサービス開始にこぎつける。

ところが、イリジウムは出だしからつまづき、サービス開始からわずか9か月後の1999年8月13日、米国破産法第11条(チャプター11)を申請し、破産することになった。

その背景には、設備投資に当時50億ドルともいわれる巨額が費やされたこと、その一方で端末や利用料金の高さや、たしかに全世界で使えはするものの、衛星と通信するという仕組み上、屋内からは使えないことなどから、加入者数が想定より伸びなかったこと、そしてなにより、セルラー方式、すなわちいわゆる普通の携帯電話の発展により、衛星携帯電話の必要性が薄れたことなどがあった。ちなみにイリジウムとほぼ同時期に、グローバルスターやオーブコムといった競合他社も現れたが、これらもやはりイリジウムと同時期に破産を経験している。

2000年3月にはついにイリジウムのサービスも停止し、衛星も大気圏に再突入させて、退役させる計画も発表された。

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