2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場(東京・新宿)で15日、竣工式が開かれた。当初計画の白紙撤回を経て、36カ月という短期間の工期で建設されたスポーツの聖地。半世紀ぶりに東京で催される祭典のシンボルとなり、世界のアスリートたちの歴史やドラマを刻む。

完成を祝う式典では、競技場に設置されたフルハイビジョンの大型映像装置を活用したテープカットが行われた。出席した安倍晋三首相は「新しい時代、令和元年に完成したスポーツの新たな拠点が、これからの歴史を刻んでいくことを心より祈念する」と祝辞を述べた。小池百合子知事は「世界の皆様をおもてなしの心で迎え、素晴らしい記憶と記録に残る大会になるよう準備を進めたい」と気を引き締めた。

国立競技場は地上5階、地下2階建て。「杜(もり)のスタジアム」をコンセプトに木材を多用し、周辺環境との調和を図った。東京大会では開閉会式や陸上競技、五輪サッカーの会場となる。

工事は大成建設などの共同企業体(JV)が担い、11月に完成。観客席はすり鉢状の3層スタンドの構造で、低層の席からは選手を間近に見ることができる。五輪の際に約6万席、パラリンピックでは約5万8千席に上る見通しで、座席は木漏れ日を意識して白や黄緑などの5色をモザイク状に配置している。

国立競技場の建設を巡っては、英建築家のザハ・ハディド氏(故人)が手掛けた当初案が巨額の整備費を理由に見送られ、建築家の隈研吾氏らデザインの計画に切り替えられた経緯がある。整備費は1569億円となり、国内で初めて1千億円を超えるスタジアムとなった。

年間の維持管理費は24億円が見込まれ、大会後のレガシー(遺産)にするための収益確保が求められる。東京大会後に民営化する方針だが、計画策定時期を20年秋以降に先送りされた。

12月21日のオープニングイベントでは、陸上男子100、200メートルの世界記録を持つジャマイカのウサイン・ボルト氏や、人気グループの嵐らが登場する。20年1月1日に行われるサッカー天皇杯決勝が最初の大会となる。

2019/12/15 12:45 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53382970V11C19A2000000/