無期刑受刑者は約1800人、仮釈放は毎年10人前後

 無期刑受刑者の仮釈放の運用状況は、法務省が犯罪白書やウェブサイトで毎年公表している。今年12月発表された資料によると、過去10年(2009〜2018年)に行われた仮釈放審理で、仮釈放が許可された無期刑受刑者の割合は329人中72人で、わずか22.0%だった(「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」2019年12月、表2-2)。つまり、受刑者が仮釈放審理を受けられるのは30年以上収容された場合に限られ、その頻度も十年に一度だが、許可されるのは4分の1に満たない。

 被害者の数が多い場合、仮釈放が認められる可能性も低くなる。吉村知事が言及した熊谷の殺人事件の被害者は6人であった。死亡被害者数が3人以上で仮釈放が認められた無期懲役受刑者は、過去10年の仮釈放審理において25人中3人であった(同資料・表2−8)。

 他方、刑務所で死亡する無期懲役受刑者は、仮釈放される受刑者よりも多い。過去10年で実際に仮釈放が認められたのは89人であったのに対し、刑務所内で死亡した無期刑受刑者は210人で、約2.3倍だった(同資料・表1−1)。

 近年、無期刑受刑者は現在約1800人で推移している。だが、毎年仮釈放が認められているのは10人前後にとどまり、刑務所内で20〜30人が死亡している。このことからみても、大半の受刑者が仮釈放されないまま刑務所内で生涯を終えているとみられる。


仮釈放される無期刑受刑者の平均服役期間も、近年は30〜35年間で推移しており、15年間前後で仮釈放されていた1960年代の2倍以上に延びている。こうした大きな運用の変化により、無期懲役刑は事実上「終身刑」化しているとの指摘(日弁連)もあるほどだ。法務省出身で刑事政策が専門の浜井浩一龍谷大矯正・保護総合センター長も、次のように指摘している。



仮釈放制度があるとはいえ、法務省の報告書にもあるように、現状では仮釈放される人より刑務所内で亡くなる方のほうが圧倒的に多く、その数は年々増加しています。現状を鑑みると、事実上一生刑務所内にいる仮釈放のない終身刑と変わらない運用となっています。

吉村知事には大阪維新の会を通じて、ツイッター投稿の内容について質問していたが、15日正午現在、回答は来ていない。

<結論>

現在、無期懲役刑の受刑者が仮釈放される可能性があるのは刑務所等に収容されてから30年後であり、仮釈放許可率も低い。近年、刑務所内で死亡した人数は仮釈放を許可された受刑者の2倍以上であり、無期懲役刑の受刑者の多くが刑務所内で死亡している。日本の無期懲役制度は仮釈放のない終身刑と異なるが、「一生刑務所ではなく、出所してくるのが通例」との吉村知事の主張の根幹部分は「誤り」と判定した。

12/15(日) 16:52   全文は↓で
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanaihitofumi/20191215-00155011/