凶行は、最高時速280キロを超える車内で起きた。逮捕された小島一朗容疑者の外見と惨劇とのギャップをどう理解すればいいのか。取材で浮かび上がったのは、容疑者とその実父との希薄すぎる父子関係だった。実の息子を「一朗君」と呼ぶ奇妙な父を直撃した。

「本人が死にたいと言っていたと聞いたので、自殺をするとか(息子が)死ぬかもしれないとは考えていた。何か事件かトラブルを起こすかもしれないという考えもゼロじゃなかった」

「週刊文春」記者にこう語るのは東海道新幹線無差別殺傷事件の犯人・小島一朗容疑者(22)の実父・S氏(52)だ。

 事件は6月9日、午後9時47分ごろ、東海道新幹線東京発新大阪行き「のぞみ265号」の12号車で起きた。ナタと果物ナイフを持った小島容疑者は、座席に座っていた2人の女性客にいきなり襲いかかったのだ。「助けて!」というただならぬ叫び声を聞いた2つ後ろの席に座っていた会社員・梅田耕太郎さん(享年38)は、凶行を阻止しようと小島容疑者に飛びかかり、もみ合いとなる。

「小島容疑者は梅田さんの上にまたがり、ナイフで首など数十カ所をメッタ刺しにしており新幹線内は血の海となりました。病院に搬送された梅田さんは間もなく死亡。切りつけられた女性2人は、幸いにも軽傷でした。警察の調べに対して、同容疑者は『むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった。(被害者らと)面識はない』、『犯行を邪魔されて逆上してやった』などと供述しています」(全国紙社会部記者)

 眼鏡姿のその風貌からは想像できない凶悪な事件を引き起こした小島容疑者とは、どんな人物なのか。

■ 放置された「アスペルガー症候群」

 小島容疑者は、愛知県一宮市で育った。上に姉が一人いる。

 実父であるS氏は、近所ではいつもニコニコしている人物として知られ、喫茶店で働いた後、いくつもの職業を転々とし、現在は、車関連の会社に勤務。母親は共産党候補として市議会議員選挙に出馬した過去を持ち、現在は団体職員としてNPO施設で働いている。

 幼少の頃の小島容疑者はのんびりした天然キャラだったというが、5歳のころ、児童保育所から発達障害の一種である「アスペルガー症候群」の疑いを指摘される。

「ところが母親は『そんなの大きくなれば治る』と病院にも通わせずに、放置していた。父のS氏の説明だと、『成長は遅いと思っていたけど、学校の先生に“この子は普通ですよ”と言われたので、病院や特殊学級には入れなかった』と言っていました。14歳のときに一朗が自ら病院に行こうとしたときも、薬代が高いからと母親はお金を渡さなかったそうです」(親族)

 地元の公立中学校に進学した小島容疑者は、やがて不登校になってしまう。S家を知る人物が語る。

「父親は『男は子供を谷底に突き落して育てるもんだ』という教育方針で息子に厳しかった。共働きのS家では同居している(父方の)祖母が食事の用意をしていたようですが、『姉のご飯は作ったるけど、一朗のは作らん』とよく言っていた。実質的に育児放棄されていた。一朗君と家族の会話はだんだんと少なくなっていったようです。そんな彼が唯一慕っていたのが、母方の祖母でした」

 小島容疑者は自室に籠もり、インターネットやテレビアニメに夢中になるなど自分の世界に没頭するようになる。食事も自炊をするか、作り置きのものを一人で食べるだけだった。

■ 深夜、両親の寝室を蹴破り……

 中2のときに、後の凶行に繋がる事件が起きる。

 この事件について、父のS氏は週刊文春に次のように証言している。

「(子供たちが)新学期だから水筒が欲しいと。それで妻が渡したんですが、姉が新品で、彼のが貰い物だった。そうしたら、その日の夜中、彼が障子を蹴破って、私と妻が寝ている寝室に怒鳴りながら入ってきて……。ここが核心に迫るんですけど、ウチにあった包丁と金槌を投げつけてきたんですよ。殺気はなかったですけど、でも刺されるかも、死ぬかもなぁ、と。だけど見当違いのほうに投げたんで、私からヘッドロックのような形で抑えにいって、10分ぐらい揉みあって、(妻に)『おい、はよ警察よべよ!』と」

――キレやすかった?

「元々からかわれて、カッとなると手が出ちゃうこともあったけど、そこは子供の喧嘩ですから」

「お姉ちゃんとの“格差”に腹が立った」

 小島容疑者は、駆けつけた警察官に対して、「新品の水筒を貰ったお姉ちゃんとの“格差”に腹が立った」と語ったという。

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https://bunshun.jp/articles/-/21172