インターネットバンキングで、知らない間に預金が送金され盗まれる被害が急増しています。犯行グループが送金先として使う口座は、これまで外国人名義のものが大半でしたが、被害が急増したことし秋以降は、日本人名義の口座が8割を占めていることが、金融機関で作る団体の調査で分かりました。金融機関の監視をかいくぐるねらいがあるとみられています。

インターネットバンキングで知らない間に預金が送金され盗まれる被害は、ことしに入って先月までに、およそ20億円となっていますが、特に秋以降急増していて、先月は7億7600万円と、1か月の被害としては過去最悪となっています。

犯行グループが送金先として使う口座は、これまで外国人名義のものが大半でしたが、10月以降は日本人名義の口座が8割を占めていることが、金融機関で作るサイバーセキュリティ団体「金融ISAC」の調査で分かりました。

金融機関は送金の依頼が不正なものでないか監視していて、外国人の口座に突然、多額の送金依頼が集中しているケースなど、不審な動きがあれば手続きを停止する対策を取ってきました。

犯行グループが日本人の口座を使うようになったのは、金融機関の監視をかいくぐるねらいがあるとみられています。

被害が急に拡大している背景には、こうした送金先の口座の変化もあるとみられ、調査を行った団体では監視態勢の強化を進めたいとしています。

日本人名義が80%に

犯行グループがこれまで不正送金先として使っていた口座は、主に日本で暮らしていた外国人が帰国する際に転売していったとみられる口座でした。

警察庁のまとめによりますと、不正送金先となった口座の名義人は、去年外国人が85%、日本人が15%でした。

ことしも6月までの上半期では外国人が87%、日本人が13%とほぼ同じ傾向でしたが、今回の団体が行った最新の調査では、10月以降この割合が逆転し、日本人がおよそ80%となっています。

ネットにあふれる口座の違法売買

犯行グループが使っている日本人名義の口座は、インターネットなどを通じて転売されたものだとみられています。

インターネット上には銀行口座の転売を呼びかけるサイトがあふれていて、大手都市銀行でおよそ4万円、地方銀行、信用金庫は2万5000円などと、銀行名とともに買い取り価格を示しているものもあります。

また、ツイッターにも口座を買い取るという投稿があふれています。
ところが、口座を転売することはそれ自体が違法です。名義人は簡単に特定されるため、すぐに摘発されますが、罪に問われることを知らず、お金ほしさに安易に転売してしまう人も少なくありません。

さらに「口座を買い取る」としながら、金を払わず口座だけをだまし取るケースもあるということです。

「通常取り引きと見分けるのに時間かかる」

調査を行った「金融ISAC」不正送金対策ワーキンググループの岩本俊二座長は「金融機関では不正送金の監視を続けているが、日本人の口座が使われると、通常の取り引きと見分けるのに複数の情報を検討して監視する必要があるため、時間がかかってしまう」と話しています。

そのうえで、「今後は監視態勢の強化を進めていくとともに、不正送金の手口などの情報を金融機関どうしでさらに共有して、少しでも被害を減らしていきたい」としています。

NHKニュース 2019年12月21日 18時29分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191221/k10012224141000.html