障害者施設を巡り、過去5年間に少なくとも全国で68件の建設反対運動が起きていた。障害者差別解消法の施行から3年がたったが、依然としていわれのない差別に苦しむ障害者の実態が見えてきた。障害のあるなしに関係なく、市民がともに暮らす社会の実現への課題を探るため、現場を歩いた。【上東麻子、千葉紀和】

「どこに住めばいい」施設反対に戸惑う障害者ら
 「運営反対」「地域住民の安全を守れ」――。今年11月、横浜市都筑区の住宅街に建てられた障害者グループホーム(GH)周辺の民家十数軒には、こう書かれた30本以上の大きな黄色いのぼり旗が並んでいた。

 このGHは、同市が2018年3月に設置を認めた。運営事業所で訪問看護サービスを展開する「モアナケア…

https://mainichi.jp/articles/20191222/k00/00m/040/178000c
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障害者施設反対、21都府県で68件 事業者任せ「把握せず」も 全国調査
毎日新聞 2019年12月22日 20時43分(最終更新 12月22日 21時01分)

グループホーム(GH)などの障害者施設が住民の反対で建設できなくなったり、建設予定地の変更を余儀なくされたりしたケースが、過去5年間に少なくとも全国21都府県で計68件起きていたことが毎日新聞の調査で明らかになった。
反対運動が起きても施設を運営する事業者に任せ、県や自治体などが対応しなかったケースが32件あった。
障害者が地域の中で暮らせるよう厚生労働省はGHの整備を進めているが、誤解や偏見に基づくあつれきが各地で頻発している実態が浮かんだ。

 障害者施設の建設を巡る住民の反対運動の多くは人口が密集する都市部で起きていると考えられるため、
47都道府県と、道府県庁所在地、政令市、中核市、東京23区の計106自治体に今年9月、2014年10月〜19年9月の5年間に起きた反対運動などについて尋ねる調査票をメールで送付。
全てから回答を得た。

 その結果、反対運動による障害者施設の建設中止や予定地の変更などは計68件起きていた。
施設を種類別でみると、GHなど入居施設が52件で最多。
就労や発達障害支援など通所施設が17件、放課後デイサービスなど障害児施設も8件あった。
障害の種類別では、知的障害者や精神障害者の施設への反対が全体の7割を占めた。
反対する理由を複数回答で尋ねると、障害者を危険視▽住環境の悪化▽説明が不十分――などが多かった。

 「(反対運動が)ない」と答えたのは71の道県と市区。一方、46の府県と市区が「把握していない」と回答しているため、実際には68件よりさらに多くの反対運動が起きているとみられる。

 16年に施行された障害者差別解消法は国や自治体に対し、障害者施設を認可する際は周辺住民の同意を求めず、住民の理解を得るため積極的に啓発活動するよう付帯決議で定めている。
しかし、反対運動が起きた時に行政が関与すべきかどうか都道府県と市区に尋ねたところ、「仲介すべきだ」と「仲介する必要がない」がほぼ同数で拮抗(きっこう)した。

全文
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