ジャーナリスト・伊藤詩織さんと元TBS記者の山口敬之氏のレイプ民事裁判。東京地裁が山口氏に330万円の支払いを命じ、詩織さんの“完勝”に終わった。大手メディアは報じていないが、詩織さんは19日の会見で重要な発言をしている。安倍首相が、山口氏の“海外逃亡”に手を貸した疑いがあるというのだ。

 詩織さんによると、安倍首相は2015年10月、笹川平和財団で講演した見返りに、山口氏をワシントンDCにあるシンクタンク「イースト・ウエスト・センター」に派遣して欲しいと笹川平和財団に要請したという。一部報道によると、イースト・ウエスト・センターと笹川平和財団は協力関係にあり、実際、山口氏は16年にセンターのHPに客員研究員として紹介されていたという。

 問題はその時期だ。山口氏は15年6月8日に逮捕されるはずだったが、直前に見送られた。同年8月26日に書類送検され、約1年後の16年7月22日に不起訴処分となっている。詩織さんの言い分が正しければ、まだ検察による捜査が続いている時期に、安倍首相はワシントンDCに“避難”させようと根回ししたことになる。検察の捜査と、メディアの取材攻勢から逃れるため、便宜を図ったのだろうか。

 詩織さんは、一連の経緯をイースト・ウエスト・センターの責任者から直接、聞いたという。

 詩織さんによれば、通常、イースト・ウエスト・センターのフェローは非常に難しい複雑なプロセスを経て選出されるが、山口氏のケースは笹川平和財団からの直接の依頼で選ばれた。これは非常にイレギュラーなケースだという。

 山口氏については不思議なカネの流れもある。週刊新潮によると、彼が生活していたのはキャピタル東急(東京・永田町)の賃貸レジデンスで広さは239平方メートル。毎月の家賃はなんと200万円だ。

 しかも、この恐ろしく高額な家賃は、安倍政権と近く、国家事業を請け負っていた「ペジーコンピューティング」というベンチャー企業の元社長・斉藤元章被告が払っていたと報じられている。

 斉藤被告は事業費を水増しし、助成金約4億3100万円をだまし取った疑いで17年12月に逮捕されたいわくつきの人物だ。

 元衆議院議員で政治学者の横山北斗氏が言う。

「詩織さんの新証言は衝撃的です。レイプ事件の最大の焦点は、権力者と近いから山口氏は逮捕を免れ、起訴もされなかったのではないか、ということです。そのうえ、アメリカへの避難にまで協力していたとしたら大問題です。いったい真相はどうなのか。大手メディアも、国会も、徹底的に追及すべきでしょう」

 控訴審はどんな展開になるのだろうか。

公開:19/12/23 15:00
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