小島慶子
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20191227-00000005-binsiderl-000-view.jpg

男女格差(ジェンダーギャップ)が過去最低の121位に転落した日本。原因は“マッチョ”で“ホモソ”なメディアにあった? 『足をどかしてくれませんか。──メディアは女たちの声を届けているか』を刊行したばかりの小島慶子さんに話を聞いた。

「イヌみたいに子どもを産まれたら困るよ」

世界経済フォーラム(WEF)の「男女格差(ジェンダーギャップ)報告書」で、日本は153カ国中121位と過去最低を記録。特に女性の政治参画が144位と足を引っ張った形だ。経済も女性管理職比率の低さなどが影響し115位だった。

BI:今回の順位の低下、率直にどう感じましたか。

小島:かなりガッカリしましたね。身近で良い変化を感じることもあったので、社会構造とのギャップをまざまざと見せつけられた感じ。政治権力や経済的な意思決定をしている人たちは、こうした変化に関して何の影響も受けない、微風すら吹かない場所にいるんだなと。

BI:良い変化とは?

小島:テレビの収録で明らかにスタジオの空気が変わってきてるんですよ。この2年くらい、バラエティ番組の収録などで「セクハラポリス」を続けてきたんです。まずい発言があれば都度「それセクハラですよ」と注意して。

初めはそんなこと言う奴は「イタイ」し、乗っかってもどうせOAには使われないから誰も味方してくれなかった。でも今はセクハラ発言に私と同じように指摘したり、「俺、今のセクハラだったかなぁ?」とタレントが自分で反省する場面も増えています。

正直、みんなが心を入れ替えたわけではないと思うんですよ。でも、こう発言した方がネットでも支持されるという、時代の“風”を読んでるんだと思います。本心ではなくとも「どんな態度が正解なのか」というトレンドを変えることが大事。それこそがメディアの役割だとも思うので、そこに少し希望を感じていたんですが……。

『足をどかしてくれませんか』は小島さんはじめ、NHK記者、東大教授、ジャーナリストなど複数の女性たちによる執筆だ。共通点はメディアで働く、またメディアやジェンダーを研究対象にしていること。Business Insider Japanもオンライン上での女性に対するハラスメントについて書いている。

中には、
「記者なんだから、イヌみたいに2人も3人も(子どもを)産まれたら困るよな」「24時間働けない人は『B級労働者』」「子宮を取れ!」など、全国紙やキー局で働く子育て中の女性たちが現場で浴びせられたという衝撃的な言葉が並ぶ。ど直球のセクハラ、マタハラ、パワハラだ。

「女性活用」がテーマのイベントに登壇依頼をした男性から
「被告席に座るということか」と聞かれた人も。保育園問題、セクハラや性暴力、家事分担……今取り上げるべきだと思うテーマをデスクに提案しても通らない、記事(企画)にならない、歪曲され、果ては炎上……。

さまざまな葛藤を抱えたメディアの女性たちのがここ数年、どのようにネットワークをつくり、連帯してきたかが克明に記されている。

時代遅れの「本音を言えちゃう面白さ」は呪いだ

小島:特にテレビが人権意識をアップデートできないのって、1980年代以降受け継がれてきた「非常識でないと面白くない」という呪いにとらわれているからだと思うんです。

これはそもそもは高学歴サラリーマンである社員スタッフのコンプレックス、つまり叩き上げのクリエイティブな才能に対する強い憧れの裏返しではないかと思います。優等生だけどバカもできるぜ、と証明したくて限度を超えるというか。

この「差別も容姿いじりも何でもアリ」という感覚が、長い期間をかけて、バラエティだけではなく情報・報道番組などあらゆる方面に浸透してきたんじゃないかと。

BI:安全な会議室からマイノリティに矢を放っているようで、卑怯だなと思います。


全文はソース元で
12/27(金) 12:10配信  ビジネスインサーダージャパン
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191227-00000005-binsiderl-bus_all&;p=1