好況の中で始まった中国経済の2010年代が、1990年代初め以降最悪の減速に見舞われながら終わった。

中国経済の次の10年は何が起きるのか。ブルームバーグは世界有数の中国ウオッチャーの何人かに話を聞いた。その顔ぶれは、2010年代の中国について先見の明を示した専門家や、多大なリターンを得たファンドマネジャーだ。

中国当局には危機回避の手段があると大方の回答者が指摘する中で、ほぼ全員が経済成長は一段と鈍化するとの見方で一致している。他国の株式と比べバリュエーション(株価評価)が記録的低水準となっている中国株は、買い時とのシグナルを送る投資家もいた。

 最大級の長期的懸念は人口動態だ。1980年代に「債券自警団」との造語を生み出したエドワード・ヤルデニ氏は、中国が「世界最大の老人ホーム」になりつつあると話している。

 実質3〜4%に低下

 【ジョージ・マグナス氏】(英オックスフォード大学中国センター研究員。習近平政権の中国に関する著書もある)

 中国が公式発表する経済成長率は6%前後で推移すると見ているが、実際の成長ペースは3〜4%に徐々に低下するだろう。2020年の公式統計での成長率は恐らく5.8〜6%になるだろう。

 過大債務や人口動態の変化、不適切な富の移転・所得再配分をめぐる政策、制度的な欠陥に関連する全要素生産性の伸び低迷が成長の主な足かせだ。20年代は中国にとって厳しい時代になる。

【ジム・オニール氏】(米ゴールドマン・サックスの元チーフエコノミスト。ブラジルとロシア、インド、中国の4大新興国を示す「BRICs(ブリックス)」という造語の生みの親)

 この先のBRICsは20〜29年に中国が年5%成長することを前提としており、それを変える理由はない。

 10年代が終わった今、中国は世界の中での立ち位置で大きな問題を抱えている。新疆ウイグル自治区の状況が示すように、人命に対する中国のアプローチは経済規模が小さかった時と比べ、世界からずっと大きな注目を浴びている。

 今後10年、中国はこうした問題の多くで、より細やかで洗練されたスタンスを採る必要があるが、中国政府がそのことを十分認識しているか分からない。

 サービス消費が中心

 【王慶氏】(上海重陽投資管理の社長兼チーフエコノミスト。08年に投入された同社の旗艦ファンドは19年11月末までに385%のリターンを記録)

 次の10年で中国が経済規模で米国を抜くのは確実だ。年間成長率は平均4%に鈍る可能性が高いが、その規模を踏まえれば、引き続き健全な水準だろう。

中国が今経験しているのは、日本や韓国が数十年前に見舞われた状況に似ている。10年、20年という視点で見れば、貿易戦争のような出来事は経済発展に伴う小さな混乱にすぎない。

 多くの好機を提供するセクターは引き続き消費だ。これまでの10年は(家電や自動車といった)耐久消費財の黄金期だったが、これからの10年はサービス消費が舞台の中心に躍り出る。教育やヘルスケア、レジャー、旅行、スポーツの分野でお宝銘柄が見つかるはずだ。

 【エドワード・ヤルデニ氏】(ヤルデニ・リサーチの社長兼最高投資ストラテジスト)

 中国の成長にとって、人口動態が本当に重しになり始めている。中国は急速に世界最大の老人ホームになりつつある。

 政府は高齢者向けに社会保障のセーフティーネットを提供する必要があり、そうしなければ国内の消費者を圧迫することになる。中国が超大国になりたいのであれば、多くの重要なファクターがあり、その一つが人口動態であるのは確かだ。(ブルームバーグ Enda Curran、April Ma)

ブルームバーグ
2020.1.1 08:22
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