デブ、ボケ、ハゲ。中高年にとって深刻な問題を「大」によって解決する─。事実、医療研究が進み、実際の治療が行われているものもある。はたして意外な「救世主」の実用現場とはいかなるものなのか。
(中略)

 便と腸研究の第一人者、東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授によれば、腸内環境は脳神経疾患から精神疾患、ガンにまで影響している。

「地球上初めての原始生物は、消化管だけで生きているものでした。脳がなくても生存する生命体はありますが、消化管のない生命体はありません。腸は脳や心臓よりも早く作られた臓器なので、腸が健康でないと全身の病気、脳や他臓器の病気も誘発するのです」

 そこでこんな疑問が持ち上がる。

 腸内環境が人体に及ぼす影響がそれほど大きいなら、便移植によって他の病気も治せるのではないか─。

 まだ人類には知られていない「ハゲ菌」があって、フサフサの人の腸内から「フサフサ菌」をもらったら毛が生えるのか。太っている人は、痩せている人から「ヤセ菌」をもらったらダイエット効果があるのではないか。あるいは、ボケた老人が若者から腸内細菌をもらったら、ボケが治るのではないか。

 驚くことに、「ボケ菌」と「デブ菌」は実在していることがわかっている。便移植でボケが治ることも判明した。「デブ菌」を治療する「肥満ワクチン」も開発が進んでいる。(中略)

 日本の便移植の臨床研究を行っているのは大宮教授の藤田医科大病院の他、滋賀医大、順天堂大学順天堂医院、慶應大学病院の4施設だが、

「便移植には、どうしても未知の病原体が患者に感染するリスクがある。そのため万全を期して、便移植のドナー候補の方には便検査、血液検査、内視鏡検査を行い、薬剤耐性菌をはじめ、各種感染症や結核などの検査を行っています」(大宮教授)

 こうした検査で合格が出たドナーにはその後、禁煙や禁酒、刺激物を摂らないなどかなり厳しい食事制限を課したうえで便移植となる。大宮教授の話を続ける。

「便移植は薬と違い、品質が均一でないことと、感染症のリスクが伴います。そのため、事前の検査に時間を要します。まだ保険承認された治療ではないので、当院では自費診療で約15万円ほどでドナー検査と便移植を行っています」

 便移植の認可を受けている4施設では治療適応の病名が挙げられているので、興味のある人は参考にしてほしい。

 欧米では便移植によるアンチエイジングや毛根の炎症抑制など、皮膚科疾患への応用研究も始まった。難病治療はもちろん、ボケ、デブの次に便移植がハゲを救う日も来るのではないか。

ソース アサヒ芸能
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