保釈中に中東のレバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)が、8日の午後3時(日本時間午後10時)から首都ベイルートで実施を予定している記者会見で、日本政府や日産の関係者らを非難する考えであることが7日、分かった。会見では実名が出てくる可能性もあり、大きな注目が集まる。またこの日、東京地検特捜部は、ゴーン被告の東京地裁での証人尋問で虚偽の証言をしたとして、偽証容疑で被告の妻キャロル・ナハス容疑者(53)の逮捕状を取った。

 箱の中に隠れて国外脱出するという大胆な行動で逃亡を成功させたゴーン被告が、今度は自分を“ハメた”人物を暴露する可能性が出てきた。

 米FOXビジネステレビの取材に応じたゴーン被告は、「私を(日産から)追放しようとするクーデターがあったことを証明する資料がある」と語った。8日の会見では関与した人物の実名を公表する計画で、その中には日本政府関係者も含まれるという。

 ゴーン被告が名前を出すことにためらいがないことは、過去の行動からも明らかだ。昨年4月の4度目の逮捕直前に撮影された動画では「汚いたくらみを実現させるべく仕掛けた多くの名前を挙げることができる」と言及。この時は弁護団が編集で実名をカットしていたが、今回は会見という生のやり取りだけに、ゴーン被告の暴走は止められない。

 日産はこの日、ゴーン被告の逃亡後では初めて正式に声明を発表。「日本の司法制度を無視した行為で、極めて遺憾だ。(ゴーン被告の)不正行為について責任を追及するという基本的な方針は、何ら影響を受けるものではない」との見解を示したが、会見で同社幹部の名前が飛び出す可能性は十分あり、防戦を強いられる恐れもある。一方、東京地裁はこの日までに、ゴーン被告が納付した保釈保証金15億円を没取し、国庫にいれることを決定した。

 また、ゴーン被告の逃亡に、米陸軍特殊部隊で活動した経験を持つ民間警備会社の人物に加え、英国の退役軍人が関与した疑いがあることが分かった。英紙フィナンシャル・タイムズ電子版が伝えた。この元軍人はアラブ首長国連邦(UAE)を拠点に航空・物流企業を経営するマイク・ダグラス氏で、プライベートジェット機の一部代金17万5000ドル(約1900万円)を支払ったことを示す明細書が存在するという。ダグラス氏は関与を否定している。

 ◆保釈中の逃走罰する法規定なし

 Q ゴーン被告はどのような罪に当たりますか。

 A 入管難民法は出国の際、審査を受けなければならないと規定しています。ゴーン被告の出国記録はなく、入管難民法違反(不法出国)の疑いがあり、有罪になれば1年以下の懲役や禁錮などの罰則が科されます。一方、保釈中の逃走そのものを罰する法規定はなく、ペナルティーはゴーン被告が保釈される際に納付した保証金計15億円の没取にとどまります。

 Q 協力者は罪に問われないのですか。

 A ゴーン被告の不法出国を手助けした「ほう助」の罪にとどまらず、共同して犯罪を行う「共同正犯」に当たると判断される可能性があります。また、起訴されているゴーン被告をかくまったり、逃走を手助けしたりしていれば、犯人蔵匿や犯人隠避の罪が成立します。この場合、ゴーン被告は、協力者をそそのかした「教唆」の罪に問われることもあり得ます。

 Q ゴーン被告は今後どうなりますか。

 A 日本政府は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて、ゴーン被告の身柄拘束を要請しています。直接レバノン政府に引き渡しを求める選択肢もありますが、両国間で犯罪人引渡条約を結んでいないため、強制力はありません。レバノン政府が日本政府にゴーン被告の送還を要請していたことを考慮すると、実現する可能性は低いとみられます。

1/8(水) 6:00配信
スポーツ報知
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