日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡劇が経済界にも大きな衝撃を与えているが、新体制で経営の立て直しを図りたい当の日産は、就任したばかりのナンバー3が早くも会社を去る意向を示すなど混乱が一向に収まっていない。そんな中、ホンダとの経営統合説まで飛び出しているが、果たして現実味はあるのか──。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

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 カルロス・ゴーン被告の国外逃亡に関し、ロイター通信は〈(逃亡)計画は3か月にわたって練られた〉と関係者の話を報じた。一方、米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、〈逃亡計画は数週間前から妻キャロルさんの主導で進められた〉とした関係者の証言を伝えており、〈先週末(2019年12月28日まで)に計画実行チームが日本に集結した〉。米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員が逃亡に関与したとの報道もある。
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 また、中東メディアのインデペンデント・アラピーヤ(電子版)は〈「軍事関連会社」が実行し、「2000万ドル(約22億円)以上の費用がかかった」〉とした。もし、この通りだとすれば、没収された保釈金15億円と脱出費用22億円、合計37億円以上が“大脱走劇”に費やされたことになる。
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 ウォール・ストリート・ジャーナルは、逃亡者・ゴーンの次のような声明を伝えている。
「友好的な司法環境が期待できるレバノンで裁判を受けるつもりだ」──。ふざけるなと言いたい。経営を永年、壟断してきたゴーン被告の海外逃亡が日産の企業イメージをさらに悪化させたことは論を待たない。
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 ゴーン被告の逃亡劇の詳報は他の機会に譲るとするが、日産は2019年12月1日、内田誠氏が社長兼最高経営責任者(CEO)に就いた。ゴーン元会長の逮捕、海外逃亡。西川廣人社長兼CEOの事実上の解任……連綿と続く経営の混乱をどうやって収拾するのかに関心が集まるが、果たして内田新社長でやれるのか。



もっともゴーン体制下での無理な販売拡大路線が、ドル箱市場の米国市場での新車の恒常的な値引きを招き、日産車は“チープなクルマ”になり下がった。だから業績悪化に歯止めがかからない。利益が出ないのは構造的な原因があるからだ。経営に関してもゴーン被告は“推定無罪”とは言い難い。
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 まず、内田・新社長は日産の筆頭株主である仏ルノーとは関係を再構築する必要がある。ルノーは日産に経営統合を提案し、これに対して独立を維持したい日産はルノーに出資比率を引き下げるよう求めるなど両社の溝は広がるばかりだった。
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 業界関係者の間では、日産の窮状、業績回復のメドが立たないことから、「日産はルノーと“離婚”して、ホンダと組み『反(アンチ)・トヨタ連合』を結成する」といった仰天の観測まで浮上してきた。この説の真贋を占ってみよう。
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◆ホンダが日産に近い日立グループと部品統合
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 2019年10月30日、ホンダと日立製作所が傘下の部品メーカー4社を経営統合することで合意した。新会社「日立オートモティブシステムズ」には、日立が66.6%、ホンダが33.4%を出資する。日産をはじめとする部品の納入先に配慮して社名からホンダを外した。
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 同社はホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業の3社と、日立の完全子会社の日立オートモティブシステムズが大同団結する。4社の合併が実現すれば、トヨタ系のデンソー、アイシン精機に次ぐ、売上高で国内第3位の自動車部品メーカーが誕生する。
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 3位といっても、デンソー、アイシン精機の背中は遠く、“弱者連合”という厳しい見方もあるが、もともと日立と日産は日産コンツェルンを源流とする同根企業。現在の日立オートモティブは日産向けが事業の3割で2番手のSUBARUの同10%を大きく引き離している。そこに、ホンダ系のエンジン関連に強いケーヒン、ステアリング(操舵装置)やショック・アブソーバー(衝撃を緩和する装置)のショーワ、2輪ブレーキで世界最大手の日信工業の3社が加わるわけだ。

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1/8(水) 7:00配信
NEWSポストセブン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200108-00000007-pseven-bus_all