鳥取県と聞いて多くの日本人が思い浮かべるのは「砂丘」だろうか。食いしん坊ならば20世紀梨の産地くらいは思いつくかもしれない。だが一般的に鳥取県に対する印象は非常に希薄である。

国内では「不動の不人気県」

 こうした印象を裏付けるかのように、ブランド総合研究所が毎年発表する「魅力度47都道府県ランキング」では鳥取県は41位。この順位は最近ほとんど変わっておらず、いわば「不動の不人気県」ともいえる存在だ。

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鳥取県の正確な位置を言い当てられる人も少ない。中国地方にあることはわかっても、たいていは隣の島根県と混同されてしまう。日本海に面して東西に細長く、知られている都市も少ない。県庁所在地である鳥取市は東部に(鳥取県の県庁所在地はと聞かれてすぐに鳥取市と答えられる人も実は少ない)、中部には倉吉市、西部には米子市と境港市があるのだが、人口は少なく、一番多い鳥取市でも19万人にすぎない。

 そんなわけで、とうとう参議院議員選挙の選挙区まで島根県と合区されてしまい、県の印象はますます希薄化しているともいえる。

 ところがどっこい、鳥取県は実は外国人の間では非常に注目される旅行先になっていることをご存じだろうか。外国人向け日本情報サイト「ガイジンポット」が公開した「2019年に外国人が訪れるべき観光地ランキング」において鳥取県は福岡や東京(代官山)を抑えて堂々の第1位を獲得したのだ。

なぜ、日本人にとって「不動の不人気県」である鳥取県が、外国人にとって魅力ある観光地となっているのだろうか。

 1つ目の理由は容易に想像がつくだろう。土地そのものの魅力だ。

「ガイジンポット」のサイトを覗くと、日本人である我々でも鳥取県が実に魅力にあふれる地であることが実感できる。まずは自然の豊かさだ。外国人にとって砂丘はもとより、砂丘から見える日本海の美しさに感動する。大山は中国地方では標高が最も高い山だが、彼らは夏のトレッキングのみならず冬のスキーリゾートとしての大山を楽しむ。

クールジャパンの代表であるアニメについても鳥取県は聖地のようなところだ。境港にある水木しげるロードは、彼が描く150体以上の妖怪が街中に鎮座し、さながらストリートミュージアムのよう。また倉吉市の北側に位置する東伯郡北栄町にある青山剛昌ふるさと館は、今や世界的なアニメとして名高い「名探偵コナン」の原作者青山剛昌の資料館で、公式ツイッターのフォロワー数も3万人を超える人気スポット。訪ねてみたい外国人は若い層を中心に多そうだ。

なぜ境港が外国人観光客の玄関口になれたのか

 2つ目の理由は、島根県と鳥取県の境目にある境港(境港市)という街の存在である。西側は中海を通して島根県に接し、東側は日本海に面する、人口約3万4千人の小さな港町である。だがここは今、遠い海の向こうからやってくる大量の外国人観光客の玄関口になっているのだ。

 境港管理組合によれば、境港に寄港するクルーズ客船の数は昨年で37隻。クルーズ客船でも大型といわれる総トン数10万トン超の船は、このうち13隻も寄港している。日本を代表するクルーズ船といえば飛鳥IIだが、この船で総トン数が約5万トンだから、飛鳥の倍以上の規模を持つクルーズ船が続々境港にやってきているということになる。

なぜ日本人に馴染みのない境港が寄港地に選ばれているかというと、それには理由がある。実は近年大型化している豪華客船は、寄港地の水深が10〜12メートルないと接岸できない。境港の水深は14メートル。豪華客船に対応できる日本有数の「水深が深い港」なのだ。




 クルーズ船から境港に降り立った外国人観光客は「水木しげるロード」に整備された商店街で特産のカニや干物を買う。彼らは1回の寄港で、1人当たりおおむね3万円から4万円の買い物をする。昨年3回寄港した大型客船、オペレーション・オブ・ザ・シーズ(168,666トン)クラスになると乗客定員数は優に4000名を超える。つまり、地元では一度の寄港、上陸で1億円を超える経済効果が期待できることになる。彼らは現地で宿泊はせず、船は翌日には岸を離れるが、街にとってはあたかも宝船がやってくるようなものだろう。

外国人観光客は前年度比40%増 

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7時間前
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