◆ 老朽風力発電、迫る大量撤去 高額建て替え費、国の追い風なく

1990年代後半以降、国などの補助で建てられた陸上風力発電所が、約20年といわれる寿命を一斉に迎え始めている。
高額な費用がネックとなり建て替え件数はわずかで、撤去が相次ぐ。
再生可能エネルギーを積極的に活用する機運にも水を差しかねない情勢だ。

津市の笠取山(標高八四二メートル)の頂上近くまで登ると、解体された風車の羽根や支柱が目に入る。
一九九九年に三重県久居市(現・津市)が新設し、再エネ事業を手掛ける中部電力グループのシーテック(名古屋市)が二〇一二年に買い取った風力発電所の「残骸」だ。

同社は設置から約二十年が経過した昨年八月に建て替えに着手した。
出力七百五十キロワットの風車四基を全て撤去し、今年後半に千五百キロワットの風車二基を新設する計画。
だが風車を製造したオランダ企業が倒産した影響で工事は手探りの連続、総額で数億円かかるとみられている。

日本では地球温暖化防止を目的に京都議定書が採択された一九九七年、再エネの普及を図る新エネルギー法が施行。
新設の風力発電所などへの補助制度が導入されたことで風車が急増した。
現在、約二千三百基に上り、今後は毎年百基超が耐用年数を迎えるとみられる。

しかし、再エネで発電した電気を国が買い取る固定価格買い取り制度は、新規の設備を手厚く支援し、建て替え後は価格が下がる仕組み。
このため採算面で二の足を踏む事業者が多く、シーテックのように建て替える事例は少ない。

逆に撤去された風車はこれまで約百五十基に達し、今後も増え続けるのは確実だ。
寿命を迎えた風車が放置される可能性も指摘されており、日本風力エネルギー学会の出野(いでの)勝監事は「風車の墓場が出現することもあり得る」と警告する。

総発電電力量に占める風力の比率は二〇一七年度現在、0・6%。
国は三〇年度に1・7%程度まで引き上げる目標を設定している。
風力発電業界は建て替えを条件にした撤去費用の公的支援を求めているが、政府側は「高めに設定した買い取り価格で建て替え費用も賄ってもらう」(経済産業省関係者)という考えだ。

京都大の安田陽特任教授(電力工学)は「洋上風力にも注目が集まっているが本格的な導入はまだ先。
陸上風力にこそ力を入れるべきだ。古い風車を撤去して大型に建て替え、発電量の増加を促す法制度の整備が必要だ」と訴えている。

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