「親代表の一括請求の子番号です。つまりクソ野郎。

(略)

 しかし、ITmedia NEWSの取材に応じたあるドコモショップの店員Aは、「口が悪いのはダメだが、このような伝達を店員間で行い、客対応に当たること自体は一般的に行われる内容。ドコモショップのいびつな評価体系が、今回のような事態を引き起こしたのではないか」と語る。

店舗ごとに課された“指標”という名のノルマ 「悪ければ営業権剥奪も」

 まず前提として、ドコモショップは全てがドコモ子会社(ドコモCS)の直営店というわけではない。むしろ、ドコモショップの約2400店舗(19年3月時点)のうち、大多数は「代理店」と呼ばれる別の会社がドコモと委託契約を結び、運営している。

 今回問題があった店舗を運営する兼松コミュニケーションズは全国で約350店舗を展開する「一次代理店(広域代理店)」で、店舗によっては二次代理店に運営を再委託している場合もあるが、問題の店舗は兼松コミュニケーションズの直営だ。ドコモショップと聞くとドコモが直接運営しているサービスのようにも思えるが、実態としてはこのような下請け構造がある。


 同社はドコモの他にKDDIやソフトバンクのキャリアショップも運営している
 ドコモからすれば、ドコモショップは消費者との主たるタッチポイントだ。端末の修理依頼や利用方法の相談などを受ける場でもあるが、新規契約を取れる場でもある。ここでいかに契約を取れるかで、ドコモの業績も左右される。

 すると、下請けである代理店は必然的に「契約獲得数」を課される。

 「現場ではずっと、ドコモ光、タブレット(dtab)、dカードや、オプションなどの“指標”を追わされている」とA氏は話す。

 店舗ごとにこのような指標が設定されており、指標を満たすと「インセンティブ」という形で奨励金がドコモから入る。このように書くと任意の目標のように思えるが、A氏は「そうではない」という。

 「指標を追わないような態度でいると、代理店の上層部がドコモに呼ばれて怒られる。あまりに評価が下がると営業権も剥奪される可能性がある。結局、やらないという選択肢はない」

 つまりドコモショップの店員は指標という名の「実質的なノルマ」を課されており、好むと好まざるとにかかわらず、来店した客に対し新規契約などの訴求をしなければならないということだ。

(略)

 つまり指標を追わなければならない店員側からすれば、“金にならない客”と映る。

(略)

現場へのしわ寄せ、総務省規制後は「冬の時代」

 “ベタ付け”ともいわれるオプションの強制加入や、固定回線やタブレットなどの強引な訴求などは、「いらないものを案内された、知らないうちに勝手に契約させられた」などと、ドコモに限らずたびたび話題になってきた。

 ユーザーにきちんと同意を取らない販売方法は論外だが、数年前までは今とは別の方法でこういった商品を訴求する手立てがあった。キャッシュバックだ。

 ショップとしては、指標をクリアすればドコモからインセンティブをもらえる。このインセンティブの一部を客に渡すことで契約数を獲得していたのを、総務省が「不当廉売」として2014年ごろから問題視し始めた。

 キャッシュバックの全盛期には、「MNP一括0円10万円CB」など、他社からMNPで契約を移行してくると端末代金を無料(実質ではなく、本当に無料)にした
(略)
ショップ側としては1人の顧客を取るだけで複数の指標の数字を作れた(逆に、そうした抱き合わせがないものは客側から“良案件”と呼ばれていた)。


(略)

規制先行でショップが苦しい状況に

 総務省の規制により、買い回りユーザーへの“不当”な金の流れはせき止められたが、ショップには契約数獲得のノルマが残った。販売手段を失ったのに、目標だけが残っている状況だ。

 では値引き以外の努力をすればいいではないかとも思うが、それも難しい状況らしい。

 「今となっては、自店舗の努力による値引きはおろか、POPを作るといったことすらほとんど認められていない。ただ言われたことをこなすだけ。毎日がつまらない」とA氏はこぼす。

 規制の波は、各キャリアの契約を取り扱う「携帯電話ショップ(併売店)」にも及んでおり、19年は分離プラン導入に前後して併売店の閉店が相次いだ。ある併売店の店長は「(19年の)6月からはもうずっと冬の時代だ」と取材に答えた。
https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2001/14/news128.html