森雅子法相は15日、自動車運転処罰法が定める危険運転致死傷の処罰対象となる運転行為に、新たに2類型を加える要綱案を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。走行中の車両の前で停車するなどして通行を妨害する行為を危険運転と規定し、社会問題化した「あおり運転」の厳罰化を図る狙い。答申時期は未定だが、法務省は早ければ20日開会の通常国会に同法改正案を提出する構えだ。

 森法相は15日の法制審総会で「あおり運転は悪質で、厳罰化を求める国民の声も高まっている。実態に即した罰則整備の検討をお願いしたい」と述べた。

 要綱案で示された2類型は、いずれも通行妨害目的で車道上に停車する行為を危険運転とみなす内容。

 一つは、走行する車両の前方で停車したり急減速したりして接近する行為。急な車線変更で割り込み、急ブレーキをかける状況などを想定している。もう一つは、高速道路など自動車専用道路で、車線上に停車するなどして走行中の車両を停止または徐行させる行為。道路交通法で駐停車が禁じられている道路でのこうした運転は、第三者を巻き込む重大事故につながる危険があるとしている。

 危険運転致死傷は、飲酒運転などの危険な運転で人を死傷させた場合に成立する。現行法の規定には、幅寄せなどのあおり運転も含まれるが「重大な交通の危険が生じる速度で走行中」との速度要件があり、適用できる範囲が限定的とされる。

 あおり運転が社会問題化する契機となった東名高速の夫婦死亡事故(2017年6月)は、被告のあおり運転によって追い越し車線上に停止させられた夫婦の車に後続のトラックが追突した。1、2審ともにあおり運転と事故には因果関係があるとして危険運転致死傷の成立を認めたが、法務省は「現行の類型ではカバーしきれないあおり運転の実態がある」などとして法改正が必要と判断した。【村上尊一】

要綱案が示した2類型

・走行中の相手車両の前方で停止するなど相手車両に著しく接近する運転行為

・高速道路など自動車専用道路で走行中の相手車両の前方で停止するなどし、相手車両を停止または徐行させる運転行為

法制審議会の臨時総会で起立してあいさつする森雅子法相(中央)と委員ら=東京・霞が関の法務省で2020年1月15日午後5時5分撮影
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