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新型肺炎「変異・拡散リスク」 中国、春節控え旅客制限
国家衛生健康委員会の幹部が初会見
2020年1月22日 17:35


【北京=多部田俊輔】中国湖北省武漢市から新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、中国政府で保健衛生を担当する国家衛生健康委員会の李斌副主任は22日、「ウイルスは変異する可能性があり、さらに拡散するリスクがある」との見方を示した。死者数は9人、患者数が440人に達した。24日からの春節(旧正月)休暇を控え、武漢市との旅客を制限することで感染拡大を抑え込む方針を示した。


同委によると、湖北省を中心に広東省、北京市、上海市など13の省と直轄市で感染を確認した。患者数が急増している理由に診断方法などの改善を挙げた。情報を隠しているとの見方については、同席した幹部が「我々は情報公開を非常に重視している」と反論した。新型肺炎の問題が起きてから、同委の幹部が記者会見を開いたのは初めて。

新型肺炎の原因について、李副主任と同席した専門家は野生動物の可能性を指摘した。発症者の多くが武漢市中心部にある海鮮市場に出入りし、同市場で野生動物が取引されていることから、武漢市で野生動物の取引を厳しく禁じたことも明らかにした。

当局は新型肺炎をコレラなど「甲類」の感染症に次いで危険度の高い「乙類」に分類した。ただ、毒性の程度について、コロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などとの比較については明言を避けた。

中国は24日から1週間の旧正月休暇を迎え、その前後を含めて中国では帰省や旅行などで延べ30億人が移動する見通し。新型肺炎の感染の拡大を抑えるため、「原則的には、ほかの地域の人は武漢に行かず、武漢の人もほかの地域に出かけないようにしてほしい」と呼びかけた。

武漢市政府は同市からほかの地域への団体旅行をとりやめるよう指導している。中国メディアによると、四川省政府はバス会社に武漢市との長距離バスの運行を原則停止するように通達を出した。2月に武漢市で開催する予定だったボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選も中止が決まった。