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中国で発見された新型コロナウイルス。日本、韓国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナムなど近隣諸国のほか、アメリカでも感染者が確認、24日からは中国は数億人の国民が移動するの大型連休に入った。

さらなる拡大が懸念されるそのウィルスの感染源には、“違法な野生動物密輸売買”が関連しているという。クアラルンプール在住のジャーナリストの末永恵氏がアジアの密猟事情と合わせて分析した。

「これは全人類への“テロ”だ」

中国・武漢の華南海産物市場で違法に売られている野生動物が感染源とされる新型コロナウイルスによる新型肺炎の感染者は、日本をはじめ、シンガポール、ベトナム、香港、タイ、台湾などのアジア諸国にまで拡大する脅威となっている。

17年前のSARSの際は、諸外国に先駆けて中国人などのビザ発給を停止し、入国封鎖を断行したマレーシアのマハティール首相(それに対抗し、中国はマレーシア、シンガポール、タイの3国への中国人渡航を禁止した)。

2018年5月に再任された同首相の名物アドバイザーで、毒舌のイギリス人ジャーナリスト、ピアース・モーガンにちなんで“アジアのピアース”といわれる、老練ジャーナリストのカディール・ジャシン氏は、今回の中国発症の新たなウイルスを全人類への“テロ”だと位置づけ、そういって中国を切り捨てた。



「違法な野生動物密輸売買」と新型ウィルス

今回、感染の「震源地」である華南海産物市場には、ヘビ、豚、鶏、犬からタケネズミ、キツネ、ヤマアラシ、アナグマ、ラクダにワニ、ヒツジ、コアラまでが、生きたまま“陳列”され、さらにそれらの動物の肉や加工品など約150品目ほどが売られていた。

実は、中国では、こうした野生動物を食用としてだけでなく、中国伝統の漢方薬や、最近では富裕層人気のレアペット、さらには高額な見返りが期待されるその希少動物の違法な繁殖ビジネスの“金のなる木”として販売されていた。



所狭しと並ぶ露店は、足元が水でビショビショ。市場で解体する肉などの血を流したりするなどで、清潔に保つため、いつも水びだしだ。中国や東南アジアの生鮮市場を「Wet market」という由来でもある

中国当局もその事実を認め、中国国営の新華社は23日、「規制の網をくぐった違法な野生動物密輸売買が拡大している証拠」と批判。さらに、「新型肺炎の感染源は、違法に販売されていた野生動物」という中国疫病防止センター長の声明を引用。その悪質で、深刻な犯罪の摘発に乗り出す姿勢を見せた。

また、同報道の中で、華南市場で売られていた動物の多くが、希少の野生動物でワシントン条約で中国や東南アジアでも取引売買が禁止されている、「絶滅危惧種のセンザンコウ」も含まれていたことを明らかにした。さらに、モンゴルの密輸業者への取材で、「ワニやセンザンコウなどはシチューにして食べるのが人気」と高額な密輸ビジネスが地方役人の腐敗の温床として、今後も拡大するだろうと語ったという。

センザンコウはアリクイに似たほ乳類の一種で、体全体が鱗で覆われている。歯がなく、シロアリなどを食べるため、動植物の絶滅データを管理する国際自然保護連合のサイモン・スチュアート委員長は「アリなどを食べるセンザンコウによる害虫駆除の価値は、数100万ドルに相当」とし、生態系の観点からも、「最後の哺乳類」といわれるセンザンコウの重要性を訴えている。

アジアの密猟事情

一方、中国では、古くからセンザンコウの肉を食用とする習慣があるほか、高級食材として高値で売られ、科学的に立証されていないが、鱗などが秘薬の材料として珍重され、インドネシアやマレーシアなどからの密猟による密輸が後を絶たない。



肉のさまざまな部分が、無造作に置かれる市場。周辺には、野良犬がウロウロ。狙っている。決して、衛生的とはいえない

筆者も新聞記者時代、東南アジアのマレーシアからタイ、そしてラオスを経て中国に密猟、密輸されるシンジケートの潜入取材を行った。その際、長い間、エサも全く与えられず、脱水症状や下痢を起こすなど、密輸業者の残酷な扱いでセンザンコウの多くが中国に行き着くまでに虐待死していったのを目のあたりにした。


全文はソース元で
5min2020.1.25
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